有価証券報告書-第161期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の流行が世界経済に多大な影響を及ぼす中、非製造業の企業収益を中心に弱さが見られ、また、雇用情勢や所得の先行きに対する不透明感も長期化していることから、全体として厳しい状況が継続しました。
建設業界においても、公共投資は堅調に推移したものの、企業業績の低迷から民間設備投資が減少し、建設投資は前年度を下回る水準で推移しました。
こうした状況のもと、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。
経営成績 (単位:億円) | 前連結会計年度 (A) | 当連結会計年度 (B) | 増減額 (B-A) | 増減率 (%) |
受注高 | 16,800 | 16,506 | △294 | △1.8% |
売上高 | 17,513 | 14,801 | △2,711 | △15.5% |
営業利益 | 1,677 | 1,305 | △372 | △22.2% |
経常利益 | 1,733 | 1,359 | △374 | △21.6% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 1,220 | 925 | △295 | △24.2% |
受注高は、土木事業及び開発事業で増加したものの、建築事業が前連結会計年度に複数の海外大型工事を受注したこと等に伴い減少したことから、前連結会計年度比1.8%減の1兆6,506億円となりました。
売上高は、土木事業及び建築事業で前連結会計年度までに複数の大型工事が竣工あるいは最盛期を迎えたこと等により減少したことから、前連結会計年度比15.5%減の1兆4,801億円となりました。
営業利益は、土木事業及び建築事業の減収に加え、開発事業で前連結会計年度に高収益の物件売却があったこと等に伴い売上総利益が減益となったことから、前連結会計年度比22.2%減の1,305億円となりました。経常利益は、営業外損益が概ね前連結会計年度並みとなったことから、同21.6%減の1,359億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に独占禁止法関連損失引当金戻入額を計上したこと等に伴う特別損益の悪化により、同24.2%減の925億円となりました。なお、ROE(自己資本当期純利益率)は、前連結会計年度比5.0%低下の11.6%となりました。
経営成績に重要な影響を与える主な要因としては、建設市場の動向並びに建設コストの変動等による経営環境の変化があります。
当連結会計年度における経営環境は、新型コロナウイルス感染症の流行や東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件の一巡などにより、競争環境が激化し、厳しい状況が続きました。今後については、短期的には新型コロナウイルス感染症が収束に向かえば、民間設備投資が徐々に回復すると想定されるものの、先行きの不透明感から、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況が継続すると考えられます。
また、中長期的には、国内建設需要の減少や少子高齢化に伴う担い手確保問題の顕在化等による業界再編圧力の高まり、環境・社会課題を事業を通じて解決する方向への変化、DXの成否が競争力を左右する時代への変化といった外部環境・構造変化が予想されます。これらの変化に先駆的に対応していくことが重要な課題であると考えております。
報告セグメント等の経営成績並びに経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容を示すと次のとおりであります(報告セグメント等の業績につきましては、セグメント間の内部取引を含めて記載しております。)。
①土木事業
売上高は、前連結会計年度までに複数の大型工事が竣工あるいは最盛期を迎えたこと等により、前連結会計年度比8.2%減の4,507億円となりました。営業利益は、減収に加え、前連結会計年度に複数の高収益の大型工事が竣工を迎えたこと等に伴う利益率低下により完成工事総利益が減少したことから、同21.4%減の560億円となりました。
②建築事業
売上高は、前連結会計年度までに複数の大型工事が竣工あるいは最盛期を迎えたこと等により、前連結会計年度比21.6%減の9,606億円となりました。営業利益は、前連結会計年度に収支改善が進まなかった一部の大型工事が竣工を迎えたこと等に伴い利益率が好転したものの、減収に伴い完成工事総利益が減少したことから、同22.8%減の638億円となりました。
③開発事業
不動産業界におきましては、ビル賃貸市場では、オフィス集約等により、都心部を中心に空室率が上昇傾向にあるものの、分譲マンション市場では、住環境への関心の高まりを背景に、全般として堅調に推移しました。
当社グループにおきましては、売上高は、当社における開発不動産の売却及び連結子会社におけるオフィスビル引渡件数の増加等により、前連結会計年度比12.3%増の1,328億円となりました。営業利益は、連結子会社において前連結会計年度に高収益の物件売却があったこと等により開発事業総利益が減少したことから同23.0%減の96億円となりました。
④その他
売上高は、前連結会計年度比4.0%減の138億円、営業利益は同4.6%減の11億円となりました。
(2) 財政状態の状況
①資産の状況
完成工事未収入金の減少等により、資産合計は前連結会計年度末比1.0%・193億円減の1兆8,706億円となりました。
②負債の状況
工事未払金の減少等により、負債合計は前連結会計年度末比9.7%・1,098億円減の1兆262億円となりました。
③純資産の状況
自己株式を取得したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に加え、株式相場上昇によるその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末比12.0%・905億円増の8,444億円となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末比5.2%好転の44.9%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①営業活動によるキャッシュ・フロー
税金等調整前当期純利益を1,354億円獲得したこと等により、当連結会計年度収支は674億円の収入超となりました。(前連結会計年度は774億円の収入超)
前連結会計年度との比較では、売上債権の減少等により工事関係収支が好転したものの、未払金の減少及び税金等調整前当期純利益の減少等により99億円の悪化となりました。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産の取得等により、当連結会計年度収支は186億円の支出超となりました。(前連結会計年度は332億円の収入超)
前連結会計年度との比較では、定期預金の増加等により519億円の悪化となりました。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
配当金の支払、自己株式の取得等により、当連結会計年度収支は373億円の支出超となりました。(前連結会計年度は666億円の支出超)
前連結会計年度との比較では、社債の発行による収入等により293億円の好転となりました。
以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,942億円(前連結会計年度末比116億円増)となり、また、資金調達に係る有利子負債の残高は2,190億円(同108億円増)となりました。なお、当期の資金調達に係る有利子負債の残高のうちノンリコース債務は1億円であります。
資本の財源及び資金の流動性については、中長期的に目指す姿[TAISEI VISION 2030]及び中期経営計画(2021-2023)に基づき、新たに生み出すキャッシュとこれまで蓄積してきた手元資金を主な原資として、株主還元や環境関連投資、DX投資などへ適切に資金を配分してまいります。
なお、中期経営計画(2021-2023)においては、M&Aを実行する場合を除き、実質無借金の維持を経営数値目標としております。
(4)生産、受注及び販売の状況
① 受注実績
(単位:百万円)
報告セグメント等の名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
土木事業 | 434,970 | 463,899 | |
建築事業 | 1,117,916 | 1,040,641 | |
開発事業 | 115,812 | 135,506 | |
その他 | 11,351 | 10,580 | |
合計 | 1,680,051 | 1,650,627 |
② 売上実績
(単位:百万円)
報告セグメント等の名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
土木事業 | 459,109 | 420,549 | |
建築事業 | 1,168,446 | 922,254 | |
開発事業 | 112,422 | 126,757 | |
その他 | 11,351 | 10,580 | |
合計 | 1,751,330 | 1,480,141 |
(注) 1 受注実績、売上実績においては、セグメント間の取引を相殺消去しております。
2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
(参考) 提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
① 受注高、売上高、繰越高及び施工高
期別 | 区分 | 前期繰越高 (百万円) | 当期受注高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期売上高 (百万円) | 次期繰越高(百万円) | 当期施工高 (百万円) | |||||
手持高 | うち施工高 | |||||||||||
第160期
| 報 告 セ グメント | 土木事業 | 639,112 | 301,710 | 940,822 | 321,379 | 619,443 | 1% | 6,981 | 318,850 | ||
建築事業 | 1,641,823 | 1,012,479 | 2,654,303 | 1,065,649 | 1,588,653 | 2 | 27,793 | 1,070,383 | ||||
計 | 2,280,935 | 1,314,189 | 3,595,125 | 1,387,028 | 2,208,097 | 2 | 34,775 | 1,389,234 | ||||
開発事業 | 10,192 | 16,226 | 26,418 | 13,226 | 13,192 | - | - | - | ||||
その他 | - | 9,268 | 9,268 | 9,268 | - | - | - | - | ||||
合計 | 2,291,127 | 1,339,685 | 3,630,813 | 1,409,523 | 2,221,289 | - | - | - | ||||
第161期
| 報 告 セ グメント | 土木事業 | 619,443 | 326,578 | 946,021 | 283,276 | 662,745 | 1% | 6,303 | 282,597 | ||
建築事業 | 1,588,653 | 956,893 | 2,545,547 | 831,908 | 1,713,638 | 2 | 28,290 | 832,405 | ||||
計 | 2,208,097 | 1,283,472 | 3,491,569 | 1,115,185 | 2,376,384 | 1 | 34,593 | 1,115,003 | ||||
開発事業 | 13,192 | 29,924 | 43,117 | 21,674 | 21,443 | - | - | - | ||||
その他 | - | 8,081 | 8,081 | 8,081 | - | - | - | - | ||||
合計 | 2,221,289 | 1,321,478 | 3,542,768 | 1,144,940 | 2,397,827 | - | - | - |
(注) 1 前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその
増減額を含めております。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。また、前期以
前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により請負金額に変更のあるものについても同様
に処理しております。
2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
4 前期の土木事業及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々1.2%、13.9%、当期の土木事業
及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々7.0%、1.8%であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
建設事業の受注方法は、特命と競争に大別されます。
期別 | 区分 | 特命 | 競争 | 計 |
第160期 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 34.0 % | 66.0 % | 100 % |
建築工事 | 50.5 | 49.5 | 100 | |
第161期 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 土木工事 | 35.4 % | 64.6 % | 100 % |
建築工事 | 39.9 | 60.1 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 合計 (B) (百万円) | ||
官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (A) (百万円) | (A)/(B) (%) | |||
第160期 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 166,616 | 146,381 | 8,381 | 2.6 | 321,379 |
建築工事 | 172,443 | 879,855 | 13,350 | 1.3 | 1,065,649 | |
計 | 339,060 | 1,026,237 | 21,731 | 1.6 | 1,387,028 | |
第161期 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 土木工事 | 139,112 | 134,369 | 9,794 | 3.5 | 283,276 |
建築工事 | 90,107 | 718,411 | 23,389 | 2.8 | 831,908 | |
計 | 229,220 | 852,780 | 33,184 | 3.0 | 1,115,185 |
(注) 1 第160期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
・ | (独行)日本スポーツ振興センター | 新国立競技場整備事業(第Ⅱ期) |
・ | ㈱ホテルオークラ | (仮称)虎ノ門2-10計画 |
・ | 三井不動産㈱ | (仮称)豊洲二丁目駅前地区第一種市街地再開発事業 2-1街区AC棟 新築工事 |
・ | 東日本高速道路㈱ | 東京外環自動車道 田尻工事 |
・ | 首都高速道路㈱ | (負)高速横浜環状北西線シールドトンネル(港北行)工事 |
2 第161期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
・ | (独行)都市再生機構 東日本賃貸住宅本部 | 四谷駅前地区(再)建設工事 |
・ | ㈱みずほフィナンシャルグループ (一社)全国銀行協会 三菱地所㈱ | (仮称)丸の内1-3計画新築工事 |
・ | 大手町142特定目的会社 | (仮称)大手町1-4-2計画 |
・ | 環境省 | 平成29年度中間貯蔵(双葉2工区)土壌貯蔵施設等工事 |
・ | 関東地方整備局 | 東京港臨港道路南北線10号地その2地区接続部及び 沈埋函(7号函)製作・築造工事 |
3 第160期及び第161期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
④ 手持工事高(2021年3月31日)
区分 | 国内 | 海外 | 合計 (B) (百万円) | ||
官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (A) (百万円) | (A)/(B) (%) | ||
土木工事 | 304,769 | 298,280 | 59,696 | 9.0 | 662,745 |
建築工事 | 325,573 | 1,210,123 | 177,941 | 10.4 | 1,713,638 |
計 | 630,342 | 1,508,403 | 237,637 | 10.0 | 2,376,384 |
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
・ | 森トラスト㈱ エヌ・ティ・ティ都市開発㈱ | (仮称)赤坂二丁目プロジェクト 新築工事 |
・ | (独行)都市再生機構 東日本賃貸住宅本部 | 虎ノ門二丁目地区(再)特定業務代行施設建築物建設工事 |
・ | 中日本高速道路㈱ | 東京外かく環状道路 本線トンネル(北行)大泉南工事 |
・ | JERAパワー武豊(同) | 武豊火力発電所5号機土木建築工事 |
・ | スリランカ空港サービス公社 | スリランカ・バンダラナイケ国際空港改善事業 フェーズ2パッケージA |
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。
なお、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。