臨時報告書

【提出】
2023/10/12 15:31
【資料】
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提出理由

当社は、2023年10月12日開催の取締役会において、当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)の併合(以下「本株式併合」といいます。)を目的とする、2023年11月22日開催予定の当社臨時株主総会(以下「本臨時株主総会」といいます。)を招集することを決議いたしましたので、金融商品取引法第24条の5第4項及び企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第4号の4の規定に基づき、本臨時報告書を提出するものであります。

株式の併合を目的とする株主総会の招集の決定

1.本株式併合の目的
2023年8月7日付「TBJH合同会社による当社株式に対する公開買付けの開始に係る意見表明に関するお知らせ」(その後の訂正を含み、以下「8月7日付適時開示」といいます。)のとおり、TBJH株式会社(2023年9月26日付けで合同会社から株式会社に組織変更。以下「公開買付者」といいます。)は、2023年8月8日に、当社の株主を公開買付者のみとし、当社株式を非公開化することを目的とする一連の取引(以下「本取引」といいます。)の一環として当社株式に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)を行うことを決定しました。そして、2023年9月21日付「TBJH合同会社による当社株式に対する公開買付けの結果並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(以下「9月21日付適時開示」といいます。)に記載のとおり、公開買付者は、本公開買付けの決済の開始日である2023年9月27日をもって、当社株式340,459,163株(所有割合(注):78.65%)を所有するに至りました。
(注)「所有割合」とは、当社が2023年8月7日付で公表した「2024年3月期第1四半期決算短信[米国基準](連結)」に記載された2023年6月30日現在の当社の発行済株式総数(433,397,301株)から、同日現在の当社が所有する自己株式数(517,115株)を控除した株式数(432,880,186株)に対する割合(小数点以下第三位を四捨五入しております。)をいいます。以下同じです。
当社は、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(2)意見の根拠及び理由」の「③当社における意思決定の過程及び理由」に記載のとおり、2022年4月7日、潜在的な投資家やスポンサーとのエンゲージメントと非公開化を含む戦略的選択肢の検討(以下「本プロセス」といいます。)を行うため、特別委員会を設置することを決議し、同月21日に本プロセスの開始を公表し、パートナー候補による当社のデュー・ディリジェンスを含む第1次入札プロセス及び第2次入札プロセス、非排他的優先交渉権を付した上での日本産業パートナーズ株式会社(以下「JIP」といいます。)との交渉、並びに(JIPへの非排他的優先交渉権付与以降も)JIP以外の複数のパートナー候補との間での協議を経て、2023年3月3日、本取引に関する資金提供者からのコミットメントレターが添付された法的拘束力のある最終提案書をJIPから受領しました。他方で、JIP以外のパートナー候補から、具体的かつ実現可能性のある提案は提出されませんでした。そこで、当社は、JIPとの間で、JIPから提示された諸条件を踏まえ、本取引の実現に向け協議及び検討を行うことにしました。
当社取締役会は、2023年3月23日付「TBJH株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に係る意見表明に関するお知らせ」(その後の訂正を含み、以下「3月23日付適時開示」といいます。なお、公開買付者は2023年4月18日付けで株式会社から合同会社に組織変更を行っておりましたが、同年9月26日付けで、合同会社から株式会社に再度組織変更を行っております。)のとおり、本公開買付価格(本公開買付けにおける当社株式1株当たりの買付け等の価格をいい、当社株式1株につき、4,620円。以下同じです。)の公正性を含む本取引の取引条件の妥当性及び手続の公正性その他本公開買付けの公正性を担保する観点から、特別委員会に対して本取引の合理性等について諮問した上、特別委員会から2023年3月23日付で提出された答申書(以下「原答申書」といいます。)の内容を最大限に尊重しつつ、2023年3月23日、本公開買付けに関して、当該時点における当社の意見として、公開買付けが開始された場合には、本公開買付けに対して賛同の意見を表明するものの、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨することまではしないこと(以下「原意見表明」といいます。)を決議いたしました(原意見表明に至った経緯及びその意見の内容の詳細については、3月23日付適時開示をご参照ください。)。その後、当社取締役会は、2023年6月8日付「TBJH合同会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に係る意見の変更に関するお知らせ」(以下「6月8日付適時開示」といいます。)のとおり、本取引の意義やその後に生じた当社を取り巻く状況の変化を踏まえ、原意見表明において留保していた本公開買付けへの応募を推奨するか否かに係る意見の内容について継続して検討していたところ、特別委員会から2023年6月8日付で当社取締役会に対して提出された答申書(以下「再答申書」といいます。)の内容を最大限に尊重しつつ、原意見表明を変更し、当該時点における当社の意見として、本公開買付けに関して、公開買付けが開始された場合には、これに賛同するとともに、当社の株主の皆様に対し、本公開買付けへの応募を推奨すること(以下「再意見表明」といいます。)を決議いたしました(再意見表明に至った経緯及びその意見の内容の詳細については、6月8日付適時開示をご参照ください。)。
一方、3月23日付適時開示のとおり、本公開買付けに関し、公開買付者は、国外の競争法令等(同日時点では、米国、カナダ、ドイツ、チェコ、ルーマニア、英国、モロッコ、モンテネグロ、ポーランド、スペイン、ベトナム、インド、サウジアラビア、エジプト、メキシコ、トルコ、オーストリアにおいて手続が必要になると考えていたとのことです。)及び投資規制法令等(同日時点では、英国、ドイツ、イタリア、米国、ルーマニア、スペイン、カナダ、オーストラリア、オーストリア、チェコ、ベルギー、デンマーク、オランダにおいて手続が必要になると考えていたとのことです。)上の手続が全て完了していること(以下「本クリアランス」といいます。)を含む、公開買付者及び当社の間で本公開買付けの実施に当たり2023年3月23日付で締結された「公開買付契約」(以下「本公開買付契約」といいます。)に規定された前提条件(以下「本前提条件」といいます。)が全て充足した日、又は公開買付者及び当社の合意若しくは公開買付者の裁量により放棄された日から実務上可能な限り速やかに(但し遅くとも10営業日以内に)、又は公開買付者及び当社が別途合意する日において、本公開買付けを開始することを予定しているものの、本クリアランスに要する期間を正確に予想することは困難であるため、本公開買付けのスケジュールの詳細については、決定次第速やかにお知らせすることとしていました。本公開買付けの開始にあたり本クリアランスを含む本前提条件が付されていることから、当社は、2023年6月8日以降、公開買付者に対して随時本クリアランスの状況について照会を行い、その進捗を確認するとともに、その後の市場株価の状況及び株主の皆様からの問合せ等も踏まえつつ、本公開買付けに関する諸条件について継続的に検討を重ねました。そして、当社は、2023年8月4日、公開買付者から、(i)本クリアランスの取得が完了した旨、(ii)本前提条件が充足され又は放棄されていることを前提として、本公開買付けを2023年8月8日から開始したい旨の連絡を受けました。
当該連絡を受けて、特別委員会は、2023年6月8日以後本取引に影響を及ぼし得る重要な状況の変化が発生しているか否かに関する事実関係の確認等を行い、再答申書における答申内容に変更がないか否かを検討した結果、再答申書の答申内容を変更すべき事情は見当たらないことを確認し、2023年8月7日、特別委員全員一致の決議により、当社取締役会に対して、同日付で当社取締役会が本公開買付けを含む本取引に賛同し、当社株主に対して、本公開買付けに応募することを推奨すべきである旨を内容とする答申書(以下「再々答申書」といいます。)を提出しました。
その上で、当社は、下記「3.1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額及び当該額の算定根拠」の「(3)本取引の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置」に記載の各措置を講じた上で、執行部(代表執行役を頂点とする当社の業務執行機関を総称していいます。以下同じです。)における独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関である野村證券株式会社(以下「野村證券」といいます。)、並びに取締役会及び特別委員会における独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるUBS証券株式会社(以下「UBS証券」といいます。)からそれぞれ取得した株式価値算定書の内容、並びに執行部における独立したリーガル・アドバイザーである西村あさひ法律事務所、並びに取締役会及び特別委員会における独立したリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所及びモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所からそれぞれ受けた法的助言を踏まえ、特別委員会から提出された再々答申書の内容を最大限に尊重して、2023年6月8日以後本取引に影響を及ぼし得る重要な状況の変化は発生しておらず、2023年8月7日時点においても、6月8日付適時開示において公表した再意見表明を変更する要因はないと判断し、本取引についての意思決定を行いました。
すなわち、当社は、株式価値評価額、取引ストラクチャ、契約条件、資金調達力・資金調達の前提条件と資金調達に関わる誓約事項、本取引実行後の経営戦略及びその支援体制、従業員の処遇及びガバナンス体制等の経営方針等の諸条件、競争法令等及び投資規制法令等上の届出その他政府機関等によるクリアランス取得の要否及びその必要期間、本取引以外の戦略的選択肢等の観点から、本取引における諸条件について、慎重に協議及び検討しました。そして、その結果、当社は、本取引により、本取引に関してJIPが金融機関から行う借入れに伴い当社が遵守することが求められる各種の財務制限条項への抵触の可能性及び抵触が生じた場合の当社事業への悪影響への懸念や、公開買付者の唯一の議決権株主であるTBJホールディングス株式会社(以下「公開買付者親会社」といいます。)の普通株式の約75%を本取引後に保有することとなるTB投資事業有限責任組合(以下「本組合」といいます。)に出資する投資家(以下「LP出資者」といいます。)は本取引により当社の実質的な大株主となるところその中に多くの当社取引先が含まれていることが当社の交渉力及び円滑な事業上の意思決定に悪影響を及ぼす可能性も否定できないといった本取引のデメリットは存在するものの、本取引は、当社の事業環境や経営課題の解決に資するものであり、特に、当社が中長期で一貫した事業戦略を実行し成長し、会社を変革していくために安定した経営基盤を構築し、株主からの統一的な支援を得ることができる点に鑑みれば、本取引は当社の企業価値の向上に合理的に資するとの結論に至りました。
また、本公開買付価格については、3月23日付適時開示のとおり、当該時点における当社の意見として、本公開買付価格による本公開買付けは、当社の一般株主にとって投資回収のための合理的な売却機会であるとは考えられるものの、一般株主に対し明らかに本公開買付けへの応募を当該時点で推奨することができる水準には達していないと考えておりました。しかしながら、主だった海外投資家が予想のつきにくい潜在的な規制リスクによる制約を受けている中、本プロセスにおいて、JIP以外のパートナー候補からは具体的かつ実現可能性のある提案はなく、JIPの提示した価格が完全に競争的で公正な本プロセスにおいて提示された唯一の具体的かつ実現可能性のある提案価格でした。2023年8月7日時点において、3月23日付適時開示の公表から約4ヶ月半が経過しておりましたが、本プロセスに参加していた投資家からもその他の投資家からも、当社取締役会に本取引の再考を促すような提案又は問合せを受領しておらず、当社株価は本公開買付価格を下回って推移しており、また、3月23日付適時開示の公表前後を通して行った複数の株主とのエンゲージメントにおいても本プロセスについて評価する意見を受けており、本公開買付価格は、潜在的な投資家及びスポンサーから期待できるものとして最善のものであることについての当社の確信は高まりました。
3月23日付適時開示公表後、2023年8月7日までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、当社は、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性をあらためて認識しました。また、当社取締役代表執行役社長CEOの島田 太郎氏(以下「島田CEO」といいます。)からは、当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には、顧客の離反及び従業員の離職を招く可能性があり、2023年度予算において定めた2024年度及び2025年度における計画値の実現が困難になるという懸念が示されておりました。かかる状況において、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格は、公正・妥当なものであり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであると考えました。このことは、本公開買付価格が、特に2021年4月6日に当社がCVC Asia Pacific Limitedから当社の買収・非公開化への非常に初期的かつ法的拘束力のない関心を表明するレター(以下「CVCレター」といいます。)を受領する前の市場株価に対するプレミアムを考えると、第三者による非公開化を目的とした他の公開買付けの事例におけるプレミアム水準との比較において相応のプレミアムが付されていることによっても補強されると考えました。
たしかに、本公開買付価格は、3月23日付適時開示公表時点において、UBS証券がディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下「DCF法」といいます。)により算定した1株当たり株式価値のレンジを、下限との差は僅少ではあるものの外れており、野村證券がDCF法により算定した1株当たり株式価値のレンジの下位25%のレンジに留まっています。しかし、DCF法による株式価値は、当社が作成した2022年度から2025年度までの財務予測(以下「本連結財務予測」といいます。)の最終年度(2025年度)の計画値に相当程度依存するところ、直近の2022年度を含め過去20年間を見ても当社が業績見込みを達成した回数は少ないことを踏まえると、当社の業績見込みの信憑性は総じて低いと言わざるを得ず、また、本連結財務予測が、2024年度及び2025年度における、デバイス事業、エネルギー事業、インフラ事業を中心とする各事業の利益率の改善に起因する大幅な増益を見込んでおり、実現のハードルが低くない計画に基づくものであることに加え、島田CEOからは当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には2023年度予算における2024年度及び2025年度の計画値の実現が危ぶまれるとの見解が示されており、本連結財務予測の最終年度(2025年度)の計画値の達成可能性には疑義があることを考慮する必要がありました。そのため、これらの事情に鑑みれば、本連結財務予測を前提とするDCF法に基づく株式価値算定に全面的に依拠することはできず、信用性の低さに鑑みて一定程度割り引いて評価することが適当であるとも考えられ、本公開買付価格が当社が公開買付者及び当社から独立した第三者算定機関である野村證券及びUBS証券から2023年3月23日付でそれぞれ取得した本株式価値算定書(公開買付者から提示された本公開買付価格に対する意思決定の過程における公正性を担保するために、公開買付者及び当社から独立した第三者算定機関である野村證券及びUBS証券に対して、当社株式の株式価値の算定及び付随する財務分析を依頼し、2023年3月23日付で、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(3)算定に関する事項」の「①当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得」の「(ii)算定の概要」に記載の前提条件その他一定の条件の下で、それぞれから取得した株式価値算定書をいいます。以下同じです。)の各DCF法のレンジの下限近傍に位置することは、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格が公正・妥当であり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであることを否定するものではないと考えました。
3月23日付適時開示公表時において、当社は、本公開買付価格が、LBO市場の弱さ、金利の上昇及び不安定な為替、マクロ経済の不透明な見込み、キオクシアホールディングス株式会社(以下「キオクシアHD」といいます。)及びキオクシア株式会社(以下、キオクシアHDと併せて「キオクシアグループ」といいます。)が現在置かれている厳しい事業環境その他の事情に影響されたものと認識しており、そのような事情が将来変化することがあれば本公開買付価格の評価も変わり得ることから、応募推奨をするか否かを当該時点で決定するよりは本公開買付け開始により近接した時点であらためて検討・意見形成する方が適切であろうと判断しておりました。そして、当社は、本取引の意義やその後に生じた当社を取り巻く状況の変化を踏まえ、原意見表明において留保していた本公開買付けへの応募を推奨するか否かに係る意見の内容について継続して検討して参りましたが、3月23日付適時開示公表から約4ヶ月半が経過した2023年8月7日時点において、マクロ経済環境を含む外部的な状況が改善する見込みは当面認識されておらず、加えて、キオクシアHDの当社における連結簿価は3月23日付適時開示公表時から2023年8月7日までに約947億円切り下げられておりました。他方で、上記のとおり、3月23日付適時開示公表後、2023年8月7日までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性を再認識しました。当社は、このような認識を前提にしつつ、一方で、本公開買付価格の引き上げについてJIPと交渉の余地があるような材料も同日時点では想定されなかったことも踏まえ、本公開買付価格の公正性・妥当性について検討した結果、本公開買付価格が応募推奨に値するものであるとの意見形成に至りました。
以上より、当社は、2023年8月7日開催の取締役会において、本公開買付けに関し、本公開買付けに対して賛同するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨することをあらためて決議いたしました。この取締役会決議は、下記「3.1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額及び当該額の算定根拠」の「(3)本取引の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置」の「⑦ 当社における取締役全員の承認」に記載の方法により決議されております。
なお、2023年8月7日当時、一連の報道にもありますとおり、キオクシアHD及びBCPE Pangea Cayman, L.P.(以下「Bain SPC」といいます。)が第三者(以下「キオクシア取引相手方」といいます。)との間でキオクシアHDとキオクシア取引相手方の経営統合の可能性を含む潜在的な取引(以下「キオクシア取引」といいます。)について協議を進めていると理解しておりました。当社としましては、キオクシアHD及びBain SPCとの間で秘密保持契約を締結してキオクシア取引に関する協議を実施することも検討したものの、当社が2023年8月7日時点で入手できる情報等も踏まえ、以下に述べるとおり、2023年8月7日時点でキオクシア取引に関する情報(以下「キオクシア取引情報」といいます。)を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねない一方で、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は2023年8月7日時点においては低いことから、キオクシアHD及びBain SPCとの間でキオクシア取引に関する協議を2023年8月7日時点において開始しないことにしました。
キオクシア取引情報は当社にとって重要事実に該当するおそれがあるため、仮に当社がそれを受領した場合には本公開買付けの開始にあたって開示することが必要になると考えられました。しかしながら、第三者間の重要な取引に関する情報を、その当事者が自ら公表する前に当社が一方的に開示することは適切でも合理的でもなく、仮に当社がキオクシア取引情報を受領してしまうと、キオクシア取引がその当事者により合意・公表されるまで、本公開買付けを開始することができなくなってしまうおそれがあると考えられました。このように、当社としては、2023年8月7日でキオクシア取引情報を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねないと考えました。
他方で、以下に述べるとおり、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は2023年8月7日においては低いと考えました。
●キオクシア取引に関して、法規制上のクリアランス取得の蓋然性等の点で一定の不確実性があり得ることは否定できません。また、仮に法規制上のクリアランスを取得できたとしても、かかるクリアランス取得までには一定の期間を要すると考えられます。
●事業のボラティリティが大きい半導体事業の性質上、キオクシア取引の対価を評価するにあたって精度の高い価値算定を行うことは困難であるように思われ、加えて、対価については、その換価可能性や換価に要する期間についても不確実性を伴う可能性があります。
●キオクシア取引を本公開買付価格の公正性・妥当性の評価において考慮するに当たっては、少なくとも当社を除く当事者の間でキオクシア取引に関する条件が最終的に合意されている確定的なものである必要があると考えられるところ、キオクシア取引が公表されていないことを踏まえると、2023年8月7日においてキオクシア取引の条件は当社が包括的な評価を行うことができるほど十分には固まっていないと推測することが合理的ともいえます。
当社としては、仮にキオクシアHDに関連する取引について関係当事者により何らかの公表がされた場合には、公表内容を速やかに検証した上で、必要に応じて、本取引の条件の公正性・妥当性についてあらためて検討し、本公開買付けに応募するか否かについて当社の株主が判断できるよう当社の意見を表明する予定としておりましたが、本公開買付けに係る公開買付期間の満了までに、かかる公表は行われませんでした。
その後、上記のとおり本公開買付けが成立いたしましたが、公開買付者が所有する当社の議決権の合計数が当社の総株主の議決権の90%以上を保有するにいたらなかったため、当社は、公開買付者からの要請により、2023年10月12日開催の取締役会において、本臨時株主総会において株主の皆様のご承認をいただくことを条件として、当社の株主を公開買付者のみとするため、当社株式93,000,000株を1株に併合する本株式併合を本臨時株主総会に付議することといたしました。
なお、本株式併合により、公開買付者以外の株主の皆様の所有する当社株式の数は、1株に満たない端数となる予定です。
また、本取引の経緯の詳細につきましては、8月7日付適時開示及び9月21日付適時開示も併せてご参照ください。
2.本株式併合の割合
当社株式93,000,000株を1株に併合いたします。
3.1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額及び当該額の算定根拠
(1)1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法
①会社法第235条第1項又は第2項において準用する同法第234条第2項のいずれの規定による処理を予定しているかの別及びその理由
上記「1.本株式併合の目的」に記載のとおり、本株式併合により、公開買付者以外の株主の皆様の所有する当社株式の数は、1株に満たない端数となる予定です。
本株式併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、会社法第235条その他の関係法令の定める手続に従い、端数相当株式を売却し、その売却により得られた代金を株主の皆様に対して、その端数に応じて交付します。当該売却について、当社は、本株式併合が、当社の株主を公開買付者のみとし、当社株式を非公開化することを目的とする本取引の一環として行われるものであること、当社株式が2023年12月20日をもって上場廃止となる予定であり、市場価格のない株式となることから、競売によって買受人が現れる可能性は低いと考えられることに鑑み、会社法第235条第2項の準用する同法第234条第2項の規定に基づき、裁判所の許可を得て公開買付者が買い取ることを予定しています。
この場合の売却価格は、必要となる裁判所の許可が予定どおり得られた場合には、本株式併合の効力発生日の前日である2023年12月21日の最終の当社の株主名簿に記載又は記録された株主の皆様の所有する当社株式の数に、本公開買付価格と同額である4,620円を乗じた金額に相当する金銭が交付されるような価格に設定することを予定しております。但し、裁判所の許可が得られない場合や計算上の端数調整が必要な場合等においては、実際に交付される金額が上記金額と異なる場合もあります。
②売却に係る株式を買い取る者となると見込まれる者の氏名又は名称
TBJH株式会社
③売却に係る株式を買い取る者となると見込まれる者が売却に係る代金の支払いのための資金を確保する方法及び当該方法の相当性
公開買付者は、端数相当株式の売却代金の支払に係る資金を金融機関からの借入れにより賄うことを予定しているところ、当社は当該金融機関からの借入れに関する契約書を確認することによって、公開買付者の資金確保の方法を確認しております。また、公開買付者によれば、端数相当株式の売却代金の支払に影響を及ぼす事象は発生しておらず、今後、発生する可能性も認識していないとのことです。
したがって、当社は、端数相当株式の売却代金の支払のための資金を確保する方法については相当であると判断しております。
④売却する時期及び売却により得られた代金を株主に交付する時期の見込み
当社は、2024年1月上旬から同月下旬を目処に、会社法第235条第2項の準用する同法第234条第2項の規定に基づき、裁判所に対して、端数相当株式を公開買付者に売却することについて許可を求める申立てを行うことを予定しております。当該許可を得られる時期は裁判所の状況等によって変動し得ますが、当社は、当該裁判所の許可を得て、2024年3月上旬を目途に、当該当社株式を公開買付者に売却し、その後、当該売却によって得られた代金を株主の皆様に交付するために必要な準備を行った上で、2024年3月中から4月上旬を目途に、当該売却代金を株主の皆様に交付することを見込んでおります。
当社は、本株式併合の効力発生日から売却に係る一連の手続に要する期間を考慮し、上記のとおり、それぞれの時期に、端数相当株式の売却が行われ、また、当該売却代金の株主への交付が行われるものと判断しております。
なお、当該売却代金は、本株式併合の効力発生日の前日である2023年12月21日時点の当社の最終の株主名簿に記載又は記録された株主の皆様に対し、当社による配当財産の交付の方法に準じて交付する予定です。
(2)端数処理により株主に交付することが見込まれる金銭の額及び当該額の算定根拠
端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額は、上記「(1)1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法」に記載のとおり、本株式併合の効力発生日の前日である2023年12月21日の最終の当社の株主名簿に記載又は記録された株主の皆様の所有する当社株式の数に、本公開買付価格と同額である4,620円を乗じた金額となる予定です。
本公開買付価格については、3月23日付適時開示のとおり、当該時点における当社の意見として、本公開買付価格による本公開買付けは、当社の一般株主にとって投資回収のための合理的な売却機会であるとは考えられるものの、一般株主に対し明らかに本公開買付けへの応募を当該時点で推奨することができる水準には達していないと考えておりました。しかしながら、2023年8月7日時点において、主だった海外投資家が予想のつきにくい潜在的な規制リスクによる制約を受けている中、本プロセスにおいて、JIP以外のパートナー候補からは具体的かつ実現可能性のある提案はなく、JIPの提示した価格が完全に競争的で公正な本プロセスにおいて提示された唯一の具体的かつ実現可能性のある提案価格でした。2023年8月7日時点において、3月23日付適時開示の公表から約4ヶ月半が経過しておりましたが、本プロセスに参加していた投資家からもその他の投資家からも、当社取締役会に本取引の再考を促すような提案又は問合せを受領しておらず、当社株価は本公開買付価格を下回って推移しており、また、3月23日付適時開示の公表前後を通して行った複数の株主とのエンゲージメントにおいても本プロセスについて評価する意見を受けており、本公開買付価格は、潜在的な投資家及びスポンサーから期待できるものとして最善のものであることについての当社の確信は高まりました。
3月23日付適時開示公表後、2023年8月7日までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、当社は、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性をあらためて認識しました。また、島田CEOからは、当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には、顧客の離反及び従業員の離職を招く可能性があり、2023年度予算において定めた2024年度及び2025年度における計画値の実現が困難になるという懸念が示されました。かかる状況において、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格は、公正・妥当なものであり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであると考えました。このことは、本公開買付価格が、特に2021年4月6日に当社がCVCレターを受領する前の市場株価に対するプレミアムを考えると、第三者による非公開化を目的とした他の公開買付けの事例におけるプレミアム水準との比較において相応のプレミアムが付されていることによっても補強されると考えました。
たしかに、本公開買付価格は、3月23日付適時開示公表時点において、UBS証券がDCF法により算定した1株当たり株式価値のレンジを、下限との差は僅少ではあるものの外れており、野村證券がDCF法により算定した1株当たり株式価値のレンジの下位25%のレンジに留まっています。しかし、DCF法による株式価値は、当社が作成した本連結財務予測の最終年度(2025年度)の計画値に相当程度依存するところ、直近の2022年度を含め過去20年間を見ても当社が業績見込みを達成した回数は少ないことを踏まえると、当社の業績見込みの信憑性は総じて低いと言わざるを得ず、また、本連結財務予測が、2024年度及び2025年度における、デバイス事業、エネルギー事業、インフラ事業を中心とする各事業の利益率の改善に起因する大幅な増益を見込んでおり、実現のハードルが低くない計画に基づくものであることに加え、島田CEOからは当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には2023年度予算における2024年度及び2025年度の計画値の実現が危ぶまれるとの見解が示されており、本連結財務予測の最終年度(2025年度)の計画値の達成可能性には疑義があることを考慮する必要がありました。そのため、これらの事情に鑑みれば、本連結財務予測を前提とするDCF法に基づく株式価値算定に全面的に依拠することはできず、信用性の低さに鑑みて一定程度割り引いて評価することが適当であるとも考えられ、本公開買付価格が当社が公開買付者及び当社から独立した第三者算定機関である野村證券及びUBS証券から2023年3月23日付でそれぞれ取得した本株式価値算定書の各DCF法のレンジの下限近傍に位置することは、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格が公正・妥当であり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであることを否定するものではないと考えました。
3月23日付適時開示公表時において、当社は、本公開買付価格が、LBO市場の弱さ、金利の上昇及び不安定な為替、マクロ経済の不透明な見込み、キオクシアグループが現在置かれている厳しい事業環境その他の事情に影響されたものと認識しており、そのような事情が将来変化することがあれば本公開買付価格の評価も変わり得ることから、応募推奨をするか否かを当該時点で決定するよりは本公開買付け開始により近接した時点であらためて検討・意見形成する方が適切であろうと判断しておりました。そして、当社は、本取引の意義やその後に生じた当社を取り巻く状況の変化を踏まえ、原意見表明において留保していた本公開買付けへの応募を推奨するか否かに係る意見の内容について継続して検討して参りましたが、3月23日付適時開示公表から約4ヶ月半が経過した2023年8月7日時点において、マクロ経済環境を含む外部的な状況が改善する見込みは当面認識されておらず、加えて、キオクシアHDの当社における連結簿価は3月23日付適時開示公表時から2023年8月7日までに約947億円切り下げられておりました。他方で、上記のとおり、3月23日付適時開示公表後、2023年8月7日までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性を再認識しました。当社は、このような認識を前提にしつつ、一方で、本公開買付価格の引き上げについてJIPと交渉の余地があるような材料も同日時点では想定されないことも踏まえ、本公開買付価格の公正性・妥当性について検討した結果、本公開買付価格が応募推奨に値するものであるとの意見形成に至りました。
なお、一連の報道にもありますとおり、キオクシアHD及びBain SPCがキオクシア取引相手方との間でキオクシア取引について協議を進めていると理解しております。当社としましては、キオクシアHD及びBain SPCとの間で秘密保持契約を締結してキオクシア取引に関する協議を実施することも検討したものの、当社が2023年8月7日時点で入手できる情報等も踏まえ、以下に述べるとおり、2023年8月7日時点でキオクシア取引情報を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねない一方で、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は2023年8月7日時点においては低いことから、キオクシアHD及びBain SPCとの間でキオクシア取引に関する協議を2023年8月7日時点において開始しないことにしました。
キオクシア取引情報は当社にとって重要事実に該当するおそれがあるため、仮に当社がそれを受領した場合には本公開買付けの開始にあたって開示することが必要になると考えられました。しかしながら、第三者間の重要な取引に関する情報を、その当事者が自ら公表する前に当社が一方的に開示することは適切でも合理的でもなく、仮に当社がキオクシア取引情報を受領してしまうと、キオクシア取引がその当事者により合意・公表されるまで、本公開買付けを開始することができなくなってしまうおそれがあると考えられました。このように、当社としては、2023年8月7日でキオクシア取引情報を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねないと考えました。
他方で、以下に述べるとおり、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は2023年8月7日においては低いと考えました。
●キオクシア取引に関して、法規制上のクリアランス取得の蓋然性等の点で一定の不確実性があり得ることは否定できません。また、仮に法規制上のクリアランスを取得できたとしても、かかるクリアランス取得までには一定の期間を要すると考えられます。
●事業のボラティリティが大きい半導体事業の性質上、キオクシア取引の対価を評価するにあたって精度の高い価値算定を行うことは困難であるように思われ、加えて、対価については、その換価可能性や換価に要する期間についても不確実性を伴う可能性があります。
●キオクシア取引を本公開買付価格の公正性・妥当性の評価において考慮するに当たっては、少なくとも当社を除く当事者の間でキオクシア取引に関する条件が最終的に合意されている確定的なものである必要があると考えられるところ、キオクシア取引が公表されていないことを踏まえると、2023年8月7日においてキオクシア取引の条件は当社が包括的な評価を行うことができるほど十分には固まっていないと推測することが合理的ともいえます。
当社としては、仮にキオクシアHDに関連する取引について関係当事者により何らかの公表がされた場合には、公表内容を速やかに検証した上で、必要に応じて、本取引の条件の公正性・妥当性についてあらためて検討し、本公開買付けに応募するか否かについて当社の株主が判断できるよう当社の意見を表明する予定でしたが、本公開買付けに係る公開買付期間の満了までに、かかる公表は行われませんでした。
また、当社は、2023年8月7日開催の当社取締役会において、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けに応募することを推奨する旨の決議をした後、2023年10月12日の当社取締役会における本臨時株主総会の招集決議に至るまでに、本公開買付価格の算定の基礎となる諸条件に重大な変更が生じていないことを確認しております。
以上のことから、当社は、端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額については、相当であると判断しております。
(3)本取引の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置
本株式併合は、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載のとおり、2023年8月7日現在において、公開買付者が所有する当社株式は100株(所有割合:0.00%)のみであり、本公開買付けは、支配株主による公開買付けには該当しません。また、当社の経営陣の全部又は一部が公開買付者に直接又は間接に出資することは予定されておらず、本公開買付けを含む本取引は、いわゆるマネジメントバイアウト取引にも該当いたしません。
もっとも、公開買付者が当社の完全子会社化を企図していること、及び、当社の株主の皆様が多様な立場及び意見を有しており、かつ、特に一部の株主は高い公正性及び透明性を担保した手続を通して本プロセスを推進することを求めていることを踏まえると、株主の皆様をはじめとする当社のステークホルダーに対して、本プロセスにおける戦略的選択肢に係る当社の検討及び判断の合理性を十分に説明するためには、本プロセスの公正性を担保するべく慎重に進める必要性が高く、公開買付者及び当社は、本公開買付価格の公正性を含む本取引の取引条件の妥当性及び手続の公正性その他本公開買付けの公正性を担保するため、それぞれ以下のような措置を実施いたしました。
なお、以下の記載のうち、公開買付者において実施した措置については、公開買付者から受けた説明に基づいております。
①入札手続の実施
8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(2)意見の根拠及び理由」の「② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程、並びに本公開買付け後の経営方針」の「(ii) 公開買付者と当社との協議、公開買付者による意思決定の過程等」に記載のとおり、当社は、2022年4月21日にパートナー候補となり得る潜在的な投資家やスポンサーからの当社の企業価値向上に向けた戦略的選択肢に関する提案を募集することを公表しました。当社は、パートナー候補に対して2022年4月下旬から5月下旬まで、当社の初期的なデュー・ディリジェンスを実施した上で、2022年5月31日、当社は、JIPを含む投資ファンド10陣営(一部コンソーシアムを含む。)から法的拘束力のない1次提案を受領しました。当社は、株主利益の確保等の評価基準に照らして、総合的かつ慎重にJIPを含む複数のパートナー候補を第2次入札プロセスへの進出者として選定し、2022年7月下旬から数ヶ月間の期間に亘り、デュー・ディリジェンスの機会を公平に与えた上で、2022年9月30日、当社は、JIPを含む複数のパートナー候補から、完成度は様々であるものの、より詳細な意向表明書を受領しました。その後、当社は、2022年10月7日、法的拘束力を有し、具体的な提案を行った唯一のパートナー候補であったJIPに対して、価格の引上げや一部の重要な公開買付け開始の前提条件の削除等一定の条件を付けて、2022年11月7日までの期間、非排他的な優先交渉権を付与しました。そして、当社はJIPに対して公開買付価格の引き上げを繰り返し求めるとともに、公開買付契約についての協議及び交渉を重ね、2023年3月3日、本取引にかかる最終提案を受領するに至り、その後の更なるJIPとの協議及び交渉を経て、JIPとの間で本取引の諸条件について合意するに至りました。なお、当社は、2022年10月7日(JIPに対する非排他的優先交渉権の付与)以降も、非公開化を前提とする提案を行ったJIP以外の複数のパートナー候補との間で協議及び交渉を行いましたが、それらいずれのパートナー候補からも、具体的かつ実現可能性のある提案は提出されませんでした。このように、当社は、JIP以外のパートナー候補との間で本取引の推進に向けた協議及び交渉を行う選択肢を排除したわけではなかったものの、それらパートナー候補との間では協議が一向に進展しなかったため、JIP以外のパートナー候補との間で当社の非公開化を含む戦略的選択肢について協議及び交渉を継続してその実行を目指すのはおよそ現実的ではないと考え、本取引の実現に向けて、唯一の法的拘束力のある提案を行ったJIPとの間で協議及び交渉を行うことにしました。
以上のとおり、当社は、本プロセスを実施し、幅広く当社の戦略的選択肢の提案を受ける機会を確保しました。
②当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得
当社は、上記「1.本株式併合の目的」に記載のとおり、2022年4月7日、本プロセスの実施のため、特別委員会を設置することを決議しました。特別委員会は、いずれも当社の社外取締役及び独立役員であり、公開買付者及び当社から独立したジェリー ブラック氏(以下「ブラック氏」といいます。)、ポール ブロフ氏(以下「ブロフ氏」といいます。)、渡辺 章博氏(以下「渡辺氏」といいます。)、今井 英次郎氏(以下「今井氏」といいます。)、ナビール バンジー氏(以下「バンジー氏」といいます。)、レイモンド ゼイジ氏(以下「ゼイジ氏」といいます。)、ワイズマン廣田 綾子氏(以下「ワイズマン氏」といいます。)で構成されており、特別委員会の委員長としてブラック氏が選定されております。このうち、ブラック氏、ブロフ氏、ゼイジ氏及びワイズマン氏は特別委員会の設置時である2022年4月7日、渡辺氏、今井氏及びバンジー氏は、同年6月28日に特別委員に就任しました。特別委員会の設置時には、当社の社外取締役及び独立役員である橋本 勝則氏及び当時当社の社外取締役及び独立役員であった綿引 万里子氏(2022年6月28日付で当社取締役を辞任)も特別委員に就任し、特別委員として本プロセスの検討に参加しておりましたが、両氏は2022年6月28日付で特別委員の職責から外れております。なお、特別委員会の構成は、2023年6月29日に開催された当社第184期定時株主総会における当社取締役の選任後も変更はありません。当社取締役会は、外部の法律事務所からの助言を受けたうえ、元特別委員の2名を含むいずれの特別委員についても、公開買付者からの独立性だけでなく、本取引の成否に関して一般株主とは異なる重要な利害関係を有していないことを書面で確認しております。なお、いずれの特別委員も当社の社外取締役及び独立役員であり、特別委員として職務に応じた報酬の支払いについては、当社の報酬委員会において別途決定しておりますが、いずれの特別委員の報酬についても、本取引の成立を条件とする成功報酬は採用されておりません。
特別委員会は、執行部による潜在的な投資家やスポンサーとの協議及び交渉について、当該協議及び交渉を行うことについて事前に通知を受け、方針を確認し、適時にその状況の報告を受け、意見を述べることができ、また、必要に応じて法令上許容される範囲で潜在的な投資家やスポンサーと直接協議及び交渉をする権限が付与されています。さらに、取締役会は、特別委員会の推奨及び意見を最大限尊重しなければならないものとされています。
特別委員会は、原則として週1回、2022年4月21日から2023年8月7日までの間に合計47回開催され、その他にも一部の委員による非公式のミーティングを多数回行い、日常的にメール、電話等によりコミュニケーションをとる等、精力的に活動しました。特別委員会は、本プロセスの参加者からの提案内容、参加者との協議状況、参加者による当社に対するデュー・ディリジェンスの重要論点への対応等を含む本プロセスに関する重要な情報について、執行部から適時に報告を受けました。また、本プロセスの重要な方針等については、あらかじめ基本的なルールを定めたうえ、特別委員会が原則として事前に執行部から報告を受けて確認しており、特別委員会は、本プロセスにおける重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行い、本プロセス及び取引条件に関する交渉過程に実質的に関与しました。特に、本プロセスの最終局面では、特別委員である渡辺氏及び今井氏が、価格条件を含む本取引の諸条件に関するJIPとの交渉を主導しました。また、特別委員会は、本取引の意義やそのメリット・デメリット等について、執行部からその見解について説明を受けた上で、本諮問事項(以下において定義します。)について協議・検討しました。
また、特別委員会は、UBS証券及び野村證券が作成した本株式価値算定書の前提となった当社の連結財務予想について執行部から説明を受け、その合理性に関して質疑応答を行い、必要に応じて意見を述べました。そして、当該意見が反映された本連結財務予測に関し、特別委員会は、その前提条件の合理性及び数字の正確性について、執行部の作成した内容を覆すことを取締役会に対して推奨すべきと考えられるような重大な問題はなく、株式価値を算定するに当たり利用可能な基礎として最も適切なものであると判断しました。また、特別委員会は、UBS証券及び野村證券から、当社宛に提出された本株式価値算定書について説明を受け、その前提等について質疑応答により確認しました。
なお、特別委員会の開催を待たずに迅速な判断が必要とされる場面では、手続の公正性を保ちつつ本プロセスを円滑に進めるために、特別委員全員に適時に情報共有をしつつ、特別委員会委員長であるブラック氏及び取締役会議長である渡辺氏を中心に執行部の方針の確認や執行部に対する指示や要請を行いました。なお、特別委員会は、その活動にあたり、下記「③ 取締役会及び特別委員会における外部の法律事務所からの助言の取得」に記載の外部の法律事務所からだけなく、その独自のフィナンシャル・アドバイザーであるUBS証券からも、主に財務的見地から本プロセス全般について幅広く助言を受けております。
当社取締役会は、2023年3月16日、特別委員会に対し、当社が表明するべき意見の内容を検討する前提として、①本取引が企業価値の向上に資するものであるか否か、②本取引の検討・協議・交渉に係る手続が公正であったか否か、③本取引の手法・取引条件が公正・妥当であるか否か、④①乃至③を踏まえて本取引が当社の一般株主(なお、ここでいう一般株主には、東京証券取引所有価証券上場規程における「少数株主」を含みます。)にとって不利益でないか否か、⑤①乃至④を踏まえて取締役会が本公開買付けに賛同し、株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するべきか否か(以下「本諮問事項」といいます。)について諮問することを決議いたしました。
特別委員会は、本諮問事項について協議及び検討を行った結果、2023年3月23日、特別委員全員の一致した意見として、当社取締役会に対し、「①本取引は当社の企業価値の向上に合理的に資すると考えられる、②本プロセスの運営を含む本取引の検討・協議・交渉に係る手続は公正であったと考えられる、③本取引の手法・取引条件は公正・妥当であると認められる、④本取引は当社の一般株主にとって不利益でないと考えられる、⑤当社取締役会が本公開買付けに賛同し、他方、当社株主に対して、本公開買付けへの応募を推奨することまでは現時点においてはしないこととすべきであり、2023年3月23日から本公開買付け開始までの間に、特別委員会に諮問した上で、当社株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するか否かについて検討し、意思決定すべきであると考える」旨の答申を行い、同日付で当社取締役会に原答申書を提出いたしました。
特別委員会は、その後も本取引の意義やその後に生じた当社を取り巻く状況の変化を踏まえ、本諮問事項について引き続き協議及び検討を行った結果、2023年6月8日、特別委員全員の一致した意見として、原答申書の内容を一部変更し、当社取締役会に対し、「①本取引は当社の企業価値の向上に合理的に資すると考えられる、②本プロセスの運営を含む本取引の検討・協議・交渉に係る手続は公正であったと考えられる、③本取引の手法・取引条件は公正・妥当であると認められる、④本取引は当社の一般株主にとって不利益でないと考えられる、⑤当社取締役会が本公開買付けを含む本取引に賛同し、当社株主に対して、本公開買付けに応募することを推奨すべきであると考えられ、また、当社取締役会は、本公開買付けの開始に際して、特別委員会に対し、上記の意見に変更がないかを検討し、変更がない場合はその旨、変更がある場合には変更内容を明らかにした上更に意見を述べるよう諮問されたい」旨の答申を行い、同日付で当社取締役会に再答申書を提出いたしました。
そして、公開買付者から当社に対する、(i)本クリアランスの取得が完了した旨、(ii)本前提条件が充足され又は放棄されていることを前提として、本公開買付けを2023年8月8日から開始したい旨の2023年8月4日付の連絡を受けて、特別委員会は、2023年6月8日以後本取引に影響を及ぼし得る重要な状況の変化が発生しているか否かに関する事実関係の確認等を行い、再答申書における答申内容に変更がないか否かを検討した結果、再答申書の答申内容を変更すべき事情は見当たらないことを確認し、2023年8月7日、特別委員全員一致の決議により、当社取締役会に対して、再々答申書を提出いたしました。
再々答申書によれば、特別委員会は、以下のとおり答申を行っております。
(i)本取引は企業価値の向上に資するものであるか否か
(1) 当社の事業環境や経営課題について
当社は、デジタル化を通じたカーボンニュートラル及びサーキュラーエコノミーの実現を目指すべく、2022年6月には「東芝グループ経営方針」(以下「本経営方針」という。)を発表し、また、戦略的選択肢の検討と特別委員会の設置を2022年4月7日に取締役会で決定して、潜在的な投資家やスポンサーとの協議を行ってきた。プロセスを進めるにあたって、執行部は、執行部主導で潜在的な投資家やスポンサーへの情報提供を進めると同時に、本経営方針の実現に向けた各種施策の検討・実施を行ってきた。執行部は、①本経営方針の実現には、事業構造の転換等、中長期で一貫した戦略の実行が必要であるものの、当社の株主の意見は依然として分かれており、マクロ経済環境の不透明さを考慮すると、執行部と株主との間の中長期的なアライメントに懸念があるものと認識しており、②度重なる経営陣の交代や、経営方針の変更、潜在的な投資家やスポンサーとの協議に関する不確実な報道が続くことで、経営の安定性に対する懸念や、社会的信用の毀損も生じており、顧客及びサプライヤーとの中長期的な取組みや、事業会社との提携・M&Aが難しくなっているものと考えており、また、③今後、人材の流出や新規採用難も懸念される状況となっているとも考えているとのことである。そして、執行部は、こうした事業環境が継続する場合、本経営方針の2030年に向けた実現が困難になりかねない状況にあると認識しているとのことである。
(2) JIPが想定する本取引のメリット及びシナジー
他方、JIPは、当社を非公開化することの目的として、①当社の新たな成長を支える安定株主基盤を作り、②当社の潜在成長力を最大限発揮させる事業戦略を遂行するための安定的な経営体制の構築と運営を行い、これにより、③当社の重要な取引先を中心とする顧客基盤を維持発展させ、④当社開発の新技術を応用した成長戦略を実現すると同時に、⑤役職員にとって働きがいのある職場となることを通じて、当社の企業価値を向上させることを挙げ、また、当社に対して提供可能な付加価値として、①多数の日本の事業に対する投資経験を通して蓄積したJIPの知見を共有することにより、当社の経営課題の解決と事業の発展を支援できること、②安定した株主基盤を実現でき、また、株主としての意思決定については本組合の無限責任組合員であるTBGP株式会社が行うため、重要な戦略の決定において、経営陣とともに迅速な判断ができること、③LP出資者には当社事業と関わりのある事業に携わっている事業会社が複数含まれており、それらの事業会社から客観的な視点からの事業面での支援が見込まれること、④JIPの顧問団はエレクトロニクス業界出身者や日本を代表する企業群の役員経験者により構成されており、当社の業容拡大に関する助言も可能であり、また、人的ネットワークを通じた必要人材の外部招聘も行うことができること、⑤LP出資者及びJIPのポートフォリオ先との協業により当社のポテンシャルの高い技術力をキャッシュ・フローの創出や企業価値向上に結び付け得ることを挙げている。
(3) 執行部による本取引のメリット及びデメリットの評価
執行部からは、本取引のメリット及びデメリットについて、以下の説明を受けている。
戦略的選択肢の検討において、株主に対しては、短期的には株主還元を最大化できること、そして長期的にも企業価値を高める改革をしっかり進められること、顧客に対しては、スピンオフ計画の提案、東芝キヤリア株式会社の売却を経て、長期サポートを望む顧客視点からも非公開化への理解が十分進んではいるものの、取引スキームそのものが顧客にとっても安心できるものであること、社員に対しては、社員が感じている当社の方向性に対する不安が軽減されること、社会に対しては、安定したインフラの継続したサポート、そのデジタル化、カーボンニュートラルに向けた革新的な技術開発を通して、「人と、地球の、明日のために。」の実現の可能性が高まること、が評価の基準になると考えている。当社の本来の企業価値は、安定した顧客基盤による安定した収益と、世の中に無い物を作り出す技術のダイバーシティにあるところ、特に現在は技術の過渡期にあり、当社が戦略としているインフラのデジタル化、サービス化、そしてプラットフォーム化、量子技術、カーボンニュートラルへとつながる電力の分散化技術、再生エネルギー技術、水素技術、CO2の削減技術、パワー半導体による電動化、革新的原子力等において当社が現在開発している多くの製品がその革新性から実際にビジネスへ展開するまでに、一定の期間を必要とし、不正会計問題から数えると8年にも及ぶ混乱は、当社の従業員にとって大きな苦痛であり、更には十分な数の新入社員の採用という意味においては、具体的に数値として課題が見えて来ている。毎日の様に、経営の混乱と言われるようなニュースがメディアで喧伝される状態を早く解消し、本来の仕事に集中できる状態を作る事が必要である。しかしながら、過去の株主総会が示す様に、現在当社の株式資本は、多くの違った意見を持つ株主で構成されており、当社の本来の企業価値を発揮するには安定的な株主が望ましい。安定的な株主基盤を実現するための手段として、現在株主への還元と、将来企業価値創造のバランスを考えるに、本取引の提案は、有効な手段だと判断する。
他方、本取引の実施による潜在的なデメリットとして、①本取引のための公開買付者による資金調達に起因する金利負担等による当社の財務状況への悪影響、②公開買付者とかかる資金の供出者との間の合意による当社の経営への重要な制約、③本取引による資本構成の変更等が第三者との間の契約における制約に抵触し、当社グループの事業に悪影響が生じるリスク、④上場会社としてのブランドを失うことによる人材の採用・リテンションへの悪影響、⑤上場会社でなくなることに伴う信用力の低下による取引機会の喪失等の事業への悪影響等が一般的に懸念される。これに加えて、公開買付者の唯一の議決権株主である公開買付者親会社の普通株式の約75%を本取引後に保有することとなる本組合の出資者には、当社の有力な取引先が多く含まれているところ、⑥取引先が間接的な大株主であることが当社の交渉力を低下させる等取引において当社の不利に働かないか、⑦間接的な大株主と競合する取引先が相対的に不利に取り扱われることや情報漏洩の可能性を懸念して当社との取引を打ち切る等の悪影響がないか、といった点も懸念される。それぞれの点について、執行部の説明によれば、①安定したキャッシュ・フローを創出する成熟した事業基盤を活用し、事業の質的な変化を進めることで、中長期では金利負担を十分にマネージできると考えているが短期的には市況変化を受けたキャッシュ・フローの悪化や、競争力確保のための前倒し投資等、一定の懸念があるため具体的な対策の検討を進めている、②金融機関からの借入れ(以下「本LBOローン」という。)に伴い各種の財務制限条項の遵守が求められるが、①と同様短期的には一定の懸念もあることから、執行部としての対策の検討を進めると同時に、今後、具体的に懸念となり得る条項については、公開買付者が金融機関と交渉を行い、当初銀行案から一定程度その条件が緩和されていること、必要な投資や組織再編等については金融機関等とも十分に協議することで影響を緩和できる可能性があること等を考慮している、③第三者との間の契約との関係における本取引の影響については、2022年5月以降に実施したデュー・ディリジェンス手続の準備等の中で当社グループに重大な悪影響を及ぼすリスクがないことを確認している、④当社は国内外において十分な知名度を有しており、上場会社としてのブランドを失ったとしても、採用やリテンションへの影響は限定的なものに留まるものと考えており、むしろ、現在の不安定な経営基盤が継続することによる採用への悪影響の方が大きく、非上場の人気企業も存在し、上場か非上場かではなく事業がしっかりしているのか、将来性があるのか、が問題であると考えている、⑤上場会社でなくなることによる事業への影響は一定程度想定されるものの、安定した経営・事業基盤を有する国内事業会社を間接的な出資者として擁する公開買付者による非公開化であれば、取引機会の喪失といった具体的かつ重大な悪影響は現時点では想定されず、むしろ、非公開化による影響よりも、現在の不安定な経営基盤が継続することによるリスクの方が大きいと考えている、⑥取引先が本組合に出資することに関して、取引先は本組合の有限責任組合員に留まる以上、当社の経営への直接の参加権はなく、あくまでも本組合への資金提供者であると認識しており、これをもって当社の交渉力が低下することは考えにくく、むしろ日本の安定した事業会社である取引先が、本組合の有限責任組合員として資金提供を行うことにより、当社取引先や顧客からの信用が高まり、ビジネス面でも良い影響が期待できると考えている、⑦LP出資者と競合する取引先との取引への影響は想定されない訳ではないが、LP出資者はあくまで本組合への資金提供者に過ぎないため、LP出資者と競合する取引先を不利に取り扱うような決定権や影響力は有しておらず、執行部としてもLP出資者と競合する取引先を不利に取り扱うとの想定はなく、むしろ、LP出資者と競合する取引先との取引についてもプラスとなる面の方が大きいと考えている、とのことである。上記に加えて、特別委員会は本取引の実施による潜在的なデメリットを極力定量的に把握すべく、執行部に対し(A)入札案件における勝率、(B)失うことが想定される顧客の数、(C)離職が想定される従業員の数、(D)従業員採用時の採用オファーの拒絶率の提供を求めたが、執行部によれば、(A)及び(B)については、網羅的な過去の実績データは持っていないが、今後も大きな影響は受けないのではないかと考えている、(C)については、外資系PEファンドによる非公開化であれば相応の従業員の離職や採用辞退も想定され得るが、本取引は日系のPEファンドであるJIP中心となっており、本組合への出資者も日系企業であることから、本取引のみをもって、従業員の離職と採用辞退が生じるとは考えていない、(D)については、非上場の人気企業も存在し、単に上場か非上場かではなく、事業がしっかりしているのか、将来性があるのか、が問題であると考えているとのことである。
(4) Plan Bの作成
特別委員会は、非公開化及びマイノリティ出資を含む戦略的選択肢を幅広く検討するために設置されたが、本プロセスにおいては、JIP以外の投資家やスポンサーからは法的拘束力のある実行可能な具体的提案を得ることができなかった。そこで、当社は、本取引の合理性及び妥当性を検証するために、Plan Bを作成する必要があったが、その基礎となる事業計画の見直しの特別委員会による要請に執行部が応じなかったため、Plan Bの具体的な検討を行うことができなかった。
2023年1月19日の特別委員会においてPlan B作成の必要性があらためて確認され、また、2023年度予算の作成に伴って2023年度見通し並びに2024年度及び2025年度の計画値についても最新の状況を確認することができることが見込まれた。その頃、特別委員からのインプットも受けつつ執行部によりPlan Bの具体的な作成が開始され、2023年3月10日の特別委員会においてその内容が報告された。
Plan Bの大要は、本連結財務予測を基に、株主価値最大化の観点から、分配可能額の範囲内で、かつ、適正資本水準を確保することができる限りにおいて最大限の株主還元策を取り入れた経営計画案である。Plan Bにおいては、一部事業の売却を含め事業ポートフォリオの大幅な見直しを行い、売却対価の全て又は大部分を株主還元の原資とすることも予定されている。キオクシアHD株式を売却して得られる手取金純額も全て株主に還元されることは既に株主に対して約束されているが、分配可能額の確保のために子会社からの配当や子会社の統合も予定されている。
(5) 特別委員会の見解
再々答申書の作成にあたって、上記(1)乃至(3)について原答申書作成時点から基本的に変更がない旨執行部から確認を得た。特別委員会の見解についても下記(a)及び(b)のとおり原答申書及び再答申書から変更はない。
(a) 本取引について
当社の事業環境や経営課題についての執行部の認識については、特別委員会も分かるところであるし、執行部の本取引は当社の多くのステークホルダー、特に従業員及び顧客の利益になるとの主張も理解する。本取引の当社の事業ひいては企業価値への影響について、本LBOローンに係る財務制限条項への抵触の可能性及び抵触が生じた場合に当社事業へ悪影響を及ぼす可能性の懸念はある。また、当社の実質的な大株主となるLP出資者が多数存在しその中に多くの当社取引先が含まれており、当社の交渉力及び円滑な事業上の意思決定に悪影響を及ぼす可能性もある。しかし、執行部が説明するように、中長期にわたって当社の業績と資産状態を変革していくためには、当社が安定した経営基盤を構築し、株主からの統一的な支援を得ることが当社に大きなメリットをもたらす可能性がある。
特別委員会は、当社の主な強みが卓越した技術者、科学者及び研究者にあるという執行部の考えに同感であるし、当社にはこの何世代かの当社の経営陣が実現できた財務的価値よりも大きな本質的価値がある可能性があると考えている。
しかし、当社事業の中長期的な成長が一貫した事業戦略を要するものであるとすると、統一的な株主の支援を得て実現した方が容易である可能性がある。当社の事業を立て直す上で、本取引により統一的な株主を得ることには大きなメリットがあり、当社の中長期的な計画の実行を促進するものとも考えられる。特別委員会は、当社に必要な大きな変革のために必要なシニア層のリソースと技量を当社が有しているかについて疑問があり、本取引が当社の変革のための外部的な触媒になることと考えている。
本取引は企業価値の向上に合理的に資するもの(又は、当社の企業価値の向上を困難にしている状況を解消するもの)と考えられる。
(b) その他の選択肢について
本プロセスにおいてJIP以外の潜在的な投資家やスポンサー(以下「その他参加者」という。)から受領した他の提案との比較においても、その他参加者からは法的拘束力のある具体的な提案を得られず、本取引の他に、当社の経営課題の解決又は企業価値の向上に資することが見込める内容の提案は、不完全な内容のものを含め、なかった。
執行部は、特別委員会が本経営方針の見直しを指示したにもかかわらず通常の予算作成プロセスが開始するまでこれに十分に対応することができず、また、2023年1月19日の特別委員会における作成の明確な指示を受けて約2ヶ月後の2023年3月10日の特別委員会で報告されたPlan Bの内容が未完成で具体性に欠いたため、大規模な変革を行うために必要な計画の策定及び実行能力が当社に存在するのか疑問を持つに至った。このような大規模な変革は、Plan Bが想定するような短期における十分な資産売却、コスト削減、適正資本配分方針及び株主還元策の強化を必要とするものである。Plan Bが仮に当社の企業価値を向上させる実行可能な案であるとしても、その策定及び実行は、非公開化に比べて、執行部の大幅な強化及び実行のためにより長期の期間を要するもののように思われ、特別委員会は、①取締役会が前回の変更から約1年で事業の大きな混乱を招くことなく執行部の大幅な変更を行うことは現実的ではないこと、及び、②特定の事業領域におけるネガティブトレンドを含めマクロ経済環境が不透明であることに鑑みれば、Plan Bは大きな実行リスクを伴うものと考えるようになった。また、執行部は現在の研究開発機能及び多様な事業が東芝の中長期的な価値にとって極めて重要であるとの一貫した信念を有しており、特別委員会が求めたPlan Bの実行のために必要となる資産売却を行うことには歴史的に消極的である。
特別委員会は、執行部が、その実行を合理的に期待することができる当社の企業価値を向上させるPlan Bをまだ示すことができていないと判断している。
(ii)本プロセスの運営を含む本取引の検討・協議・交渉に係る手続が公正であったか否か
(1) 公正M&A指針が推奨する公正性担保措置の実施
本取引は、「公正なM&Aの在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(以下「本指針」という。)が直接の対象とする取引には該当しないが、当社の株主は多様な立場・意見を有しており、かつ、特に一部の株主からは高い公正性・透明性を担保した手続を通して戦略的選択肢を策定するように求められていたこと、本邦における同種案件において最大級の案件の1つとなり得る潜在的な取引の規模・多岐にわたる事業ポートフォリオ・国家安全保障の観点からセンシティブな事業の存在・情報漏洩の多さ・深まるマクロ経済環境及び金融市場の不透明感等を背景として、本プロセスにおける戦略的選択肢の検討・決定の難度は、特に執行部の参画なくして、高いことは当初より明らかであったことから、特別委員会は、当社のステークホルダーに対して、本プロセスにおける戦略的選択肢に係る当社の検討・判断の合理性を十分に説明するためには、本指針を参照しつつ、適切かつ実務上可能な限り同指針で挙げられている公正性担保措置をとりながら本プロセスを進めるのが適切であると判断し、本プロセスが本指針に準拠して実施されるよう監督した。なお、本プロセスの終盤になって、JIPの提案とともに金融機関(シニアローン及び劣後ローンの資金提供者)から提出されたコミットメントレターにおいて、貸出実行の前提条件及び貸出実行後のコベナンツとして、島田CEO及び柳瀬 悟郎氏(以下「柳瀬氏」という。なお、柳瀬氏ヘの言及は、2023年3月6日に提出された最新のコミットメントレターからは除かれた。)が当社の経営陣として留任すること(コベナンツの対象期間は本公開買付けの決済開始日から3年間)が定められており、経営陣との潜在的な利益相反の可能性が存在することから、特別委員会は、本プロセスの公正性の確保について特に留意した。
(2) 特別委員会の構成・活動及び実効性・公正性等の確保
特別委員会は、当社の社外取締役及び独立役員のみで構成され、設置されて以来3月23日付適時開示公表までは原則として週1回、3月23日付適時開示公表後は必要に応じて開催され、その他にも一部の委員による非公式のミーティングを行う等、精力的に活動し、また、パートナー候補からの提案内容等を含む本プロセスに関する重要な情報について、執行部から適時に報告を受けていた。また、フィナンシャル・アドバイザーとの株式価値算定についての議論の場としてValuation Subcommitteeも設置された。執行部によるパートナー候補との重要なコミュニケーション・交渉方針等については、あらかじめ基本的なルールを定めたうえ、特別委員会が原則として事前に執行部から報告を受けて確認しており、特別委員会は、本プロセスにおける重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行い、監督を行うことで本プロセス及び取引条件に関する交渉過程に実質的に関与した。
また、特別委員会は、JIPとの条件交渉が最終局面を迎えている中で徹底的な交渉が行われることを確保するために、また、2023年2月8日付のJIPの提案とともに金融機関から提出されたコミットメントレターにおいて貸出実行の前提条件及び貸出実行後のコベナンツとして、島田CEO及び柳瀬氏(上記のとおり、柳瀬氏ヘの言及は、2023年3月6日に提出された最新のコミットメントレターからは除かれた。)が当社の経営陣として留任すること(コベナンツの対象期間は本公開買付けの決済開始日から3年間)が定められていたことから、手続の公正性を確保するために、特別委員会の関与の必要性が高まったことを踏まえ、2023年2月10日以降のJIPとの交渉は、渡辺氏及び今井氏が第一次的にリードし、ブラック氏、他の特別委員及び執行部と緊密に連携していくことが決定され、渡辺氏及び今井氏がJIPと直接交渉を行った。
各特別委員について、質問票を通じてパートナー候補及び本取引からの独立性が認められることを確認する等して、特別委員が公正かつ独立した立場で検討・交渉等を行うことができる体制が構築されていた。また、バンジー氏及び今井氏は当社の大株主の上級業務執行者でもあることを踏まえ、両名が当社の取締役となり特別委員会に参加することに伴う潜在的な利益相反、独立性、秘密保持その他の事項に対応するために、バンジー氏の取締役候補者としての指名にあたってはElliott Advisors (UK) Limitedとの間で、今井氏の取締役候補者としての指名にあたってはFarallon Capital Managementとの間で、2022年5月付でNomination Agreementを締結し、当該契約に含まれるrecusal条項に基づき出身母体である大株主との潜在的な利益相反のリスクが適切に管理されていた。
(3) 本プロセスの実効的な実施
2022年3月臨時株主総会において、透明な手続により戦略的選択肢の比較・検討を続けることを求める株主提案が株主から相当程度の支持を受けたことも踏まえ、当社は、本プロセスの開始当初からその実施を公表し、かつ、その過程においても本プロセスの実効性を害しない範囲で透明性のある開示を行った。
他方、情報管理については、本プロセスを開始する前から、その具体性の高さから、当社は経営層からリークされた可能性が高いと思われる情報についてメディアによるリーク報道が相次いだため、当社は、本プロセスの当初より、パートナー候補を含む社内外の関係者に対して情報管理の重要性を強調し、機密情報の共有範囲を含め情報管理に特に留意していた。
そして、本プロセスの全体を通して競争環境を維持するために細心の注意が払われて本プロセスが推進されたこと、JIPによる買収資金の手当てのための取組みに向けて当社も積極的な協力・制限を行ったこと、第1次入札プロセスにおいて意向表明書を提出した者のうち、第2次プロセスに進出するパートナー候補の選定については、合理的で十分な情報を踏まえた判断を確保するために慎重に検討されたこと、第2次プロセスに進出したスポンサー候補に対してデュー・ディリジェンスの機会が公平に付与されていたこと、資金調達を加速する観点からJIPに対して非排他的優先交渉権が付与されたものの、他のパートナー候補からの提案状況に鑑みれば、合理的な判断であったといえ、競争環境の維持に及ぼす影響は仮にあったとしても極めて軽微であったといえることなどの事情を踏まえると、本プロセスは実効的に行われていたといえる。
(4) 他の買収者による買収提案の機会の確保
上記のとおり、本プロセスにおいては、本プロセスの開始当初からその実施を公表し、執行部から本プロセスへの参加を促した者に限定せずに、本プロセスにおいて提案の提出を検討する意向を示すパートナー候補となり得る全ての潜在的な投資家やスポンサーに対して戦略的選択肢に関する提案の募集を行い、幅広い提案者から幅広く戦略的選択肢の提案を受ける機会を確保するという、公開の入札プロセスを通じた積極的なマーケット・チェックが実施された。
また、公開買付期間は30営業日とすることが合意されているが、3月23日付適時開示による本取引に係る公表から本公開買付けの開始まで約4ヶ月半という比較的長期の期間が経過しており、3月23日付適時開示公表後においても、当社の株主において本公開買付けに応募するかについて適切な判断機会が確保されるとともに、当社株式について、公開買付者以外の者が本取引の内容を踏まえた上で対抗提案を行う機会が十分に確保されているものと認められる。さらに、本公開買付契約において定められた各種の取引保護条項は、当社による対抗的買収提案者との接触等を過度に制限するものではないと認められる。
(5) 必要な情報の収集
(a) 本取引に関する情報
執行部及び特別委員会は、借入規模にも鑑み財務制限条項を含む本LBOローンの内容が当社の事業に大きく影響すると考えられたことから、本LBOローンの内容の開示を積極的に求め、開示を受けた。また、LP出資者には当社の取引先も多いことから、JIPとLP出資者その他の者の間に本取引と関連して当社の事業に影響し得るような合意がないかについても、交渉の最終段階において、渡辺氏及び今井氏がJIPの社長及び副社長と直接面談し、そのような合意がないことを確認した。特別委員会は、特別委員会ひいては当社の株主がインフォームド・ジャッジメントを行うために最大限努力した。さらに、3月23日付適時開示公表後も、本LBOローンの条件についての交渉を含むJIPと金融機関の協議の状況についてはJIPから情報提供を受けた。
(b) キオクシアに関する情報
当社は、2017年から2018年にかけて東芝メモリの全株式を、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」という。)を中心とする企業コンソーシアムに売却したが、その際、当社は、ベインキャピタルから買主SPC(現キオクシアHD))へのパッシブなかたちでの再出資の要請を受けた。かかるメモリ事業の売却は、当時、当社が債務超過にある中で、メモリ事業の更なる成長の促進に必要な経営資源の確保及び当社の財務体質の健全化を目的として行われたものであったところ、当社は、限られた時間の中でキオクシアHDの売却を完遂するため、また、売却により実現する価値を確実に収益認識する観点からも、上記のパッシブな再出資の要請に応じることとし、当社は当該再出資(すなわち、メモリ事業の売却)後においてメモリ事業の経営に関与しないことが合意された。現在においても当社の価値に占めるキオクシアHD株式の価値の比重は大きいが、上記の経緯から、当社は、キオクシアグループの経営に関与していない。もっとも、当社の財務報告の目的で一定の限定的な情報を受領しているが、当社は、キオクシアグループに関する情報を受領する法律又は契約上の権利を有しておらず、関与は受動的なものに留まる。
他方で、本プロセスを取り進めるにあたり、執行部及び特別委員会は、キオクシアグループに関するより詳細な情報を受領し、特別委員会の検討の基礎とするのが望ましいと考え、2022年10月、特別委員会からキオクシアHDに対して、一定の情報の提供とキオクシアグループに対する質疑応答の機会の付与を要請するレターを送付し、キオクシアHDと協議を実施した。完全な協力を得ることはできなかったが、2022年11月28日、当社及びUBS証券は、キオクシアHDに対して、ラーニングセッションを実施し、半導体メモリ事業の業界動向及び業界見通しに関する見解を求めた。しかし、キオクシアHDは当社に対し、キオクシアHDのビジネスに関する情報や今後の見通しについては、一切開示しなかった。
なお、パートナー候補に対するキオクシアグループに関するデュー・ディリジェンスの機会の提供という観点では、当社は、保有するキオクシアグループに関する情報を、リーガル・アドバイザーのアドバイスも踏まえ、キオクシアHDの株主間での契約上許容されると考えられる限度でパートナー候補に開示している。
当社は、キオクシアグループに関する情報が限定されているとの問題に対して、実務上できる対応を行った。
なお、一連の報道にもあるとおり、キオクシアHD及びBain SPCがキオクシア取引相手方との間でキオクシア取引について協議を進めていると理解している。当社としては、キオクシアHD及びBain SPCとの間で秘密保持契約を締結してキオクシア取引に関する協議を実施することも検討したものの、当社が現時点で入手できる情報等も踏まえ、以下に述べるとおり、現時点でキオクシア取引情報を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねない一方で、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は現時点においては低いことから、キオクシアHD及びBain SPCとの間でキオクシア取引に関する協議を現時点において開始しないことにした。
キオクシア取引情報は当社にとって重要事実に該当するおそれがあるため、仮に当社がそれを受領した場合には本公開買付けの開始にあたって開示することが必要になると考えられる。しかしながら、第三者間の重要な取引に関する情報を、その当事者が自ら公表する前に当社が一方的に開示することは適切でも合理的でもなく、仮に当社がキオクシア取引情報を受領してしまうと、キオクシア取引がその当事者により合意・公表されるまで、本公開買付けを開始することができなくなってしまうおそれがあると考えられる。このように、特別委員会としては、現時点でキオクシア取引情報を受領することは本取引の円滑な実施にあたっての重大な障害となりかねないと考えている。
他方で、以下に述べるとおり、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は現時点においては低いと考えられる。
●キオクシア取引に関して、法規制上のクリアランス取得の蓋然性等の点で一定の不確実性があり得ることは否定できない。また、仮に法規制上のクリアランスを取得できたとしても、かかるクリアランス取得までには一定の期間を要すると考えられる。
●事業のボラティリティが大きい半導体事業の性質上、キオクシア取引の対価を評価するにあたって精度の高い価値算定を行うことは困難であるように思われ、加えて、対価については、その換価可能性や換価に要する期間についても不確実性を伴う可能性がある。
●キオクシア取引を本公開買付価格の公正性・妥当性の評価において考慮するに当たっては、少なくとも当社を除く当事者の間でキオクシア取引に関する条件が最終的に合意されている確定的なものである必要があると考えられるところ、キオクシア取引が公表されていないことを踏まえると、現時点においてキオクシア取引の条件は当社が包括的な評価を行うことができるほど十分には固まっていないと推測することが合理的ともいえる。
当社としては、仮にキオクシアHDに関連する取引について関係当事者により何らかの公表がされた場合には、公表内容を速やかに検証した上で、必要に応じて、本取引の条件の公正性・妥当性についてあらためて検討し、本公開買付けに応募するか否かについて当社の株主が判断できるよう当社の意見を表明することが適当といえる。
(6) その他の公正性担保措置
このほか、本取引を推進するにあたり、当社は取締役会及び特別委員会における公開買付者及び当社から独立したリーガル・アドバイザーとして、長島・大野・常松法律事務所及びモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所を、執行部における公開買付者及び当社から独立したリーガル・アドバイザーとして西村あさひ法律事務所を選任して法的助言を受けていること、当社は取締役会及び特別委員会における公開買付者及び当社から独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関としてUBS証券を、執行部における公開買付者及び当社から独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として野村證券を選任し、それぞれから2023年3月23日付で本株式価値算定書を取得したこと、3月23日付適時開示及び6月8日付適時開示の公表にあたって、本指針が開示を推奨している情報を含む十分な開示が行われたこと、また、8月7日付適時開示において同様に十分な開示が行われる予定であること、本取引において一般的に強圧性を生じさせないような配慮がされていること等の公正性担保措置が履践されている。
(7) 特別委員会の見解
特別委員会は、本プロセス開始当初より、本指針に実務上可能な限り準拠して本プロセスが運営されるよう監督を実施した。特別委員会は社外取締役及び独立役員のみにより構成されており、執行部に対して多くの重要な局面において意見を述べ、指示や要請を行って、本プロセスに実質的に関与するとともに、週次の会議の際は充実した議論が行われた。さらに、2023年2月10日以降は、特別委員会の委員である渡辺氏及び今井氏が中心になってJIPと直接交渉を行った。このように、本プロセスを推進するにあたり、特別委員会が実効的に機能していたものと結論づける。
本プロセスも高い透明性をもって、競争環境の構築・維持を強く意識して、開かれた、公正で、かつ実効的な形で運営されていたと評価できる。本プロセスを経て得られた本取引に係る提案が非公開化提案として最良のものであると考えられるが、他の買収者による提案の機会も残されている。よって、本プロセスの運営を含む本取引の検討・協議・交渉に係る手続は公正なものであったと考えられる。
(iii)本取引の手法・取引条件が公正・妥当であるか否か
(1) 交渉経緯
提出された法的拘束力のある具体的な提案はJIPのもののみであった。また、JIPからの提案価格も、2022年9月30日付の提案では5,200円から5,500円、2022年11月7日付の提案では5,200円、2023年2月8日付の提案では4,710円、2023年3月3日付の最終提案では4,610円であり、JIPとの交渉によりそこから10円上積みされ、最終的に公開買付価格を4,620円で合意することになった。
当初提案から最終提案の間に、2022年度第2四半期及び第3四半期の業績発表があり、いずれも執行部の見通しに届かないものであった。執行部は当該業績悪化がその性質上一過性のものであるとの見解を維持しているものの、リスクマネジメント心理や金融機関その他の資金提供者の投資判断への悪影響を及ぼしたものと考えられる。
当社は、2023年2月8日付の提案受領後、執行部に代えて渡辺氏及び今井氏に直接JIPとの交渉に複数回当たらせたことを含め、徹底的な交渉がなされる状況の確保に努めたものであり、当初提案から最終提案の間に提案価格が大幅に低下したことは当社の業績悪化によるところが大きく、当社は株主にとってできる限り有利な条件で本取引が行われることを目指して合理的な努力を行ってきた。
(2) 本公開買付価格の評価
UBS証券による株式価値算定書(以下「株式価値算定書(UBS証券)」という。)における当社株式の1株当たりの株式価値の範囲はそれぞれ以下のとおりである。当該算定書作成並びにその基礎となる評価分析に関する前提条件及び留意事項については、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(3)算定に関する事項」の「① 当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得」の「(ii)算定の概要」の(注)を参照されたい。
市場株価平均法(基準日1): 3,195円~3,878円
市場株価平均法(基準日2): 4,200円~4,683円
類似企業比較法: 3,231円~7,133円
DCF法: 4,661円~7,333円
野村證券による株式価値算定書(以下「株式価値算定書(野村證券)」という。)における当社株式の1株当たりの株式価値の範囲はそれぞれ以下のとおりである。
市場株価平均法: 4,200円~4,683円
類似会社比較法: 1,967円~5,564円
DCF法: 4,171円~7,000円
本公開買付価格は、市場株価(3月23日付適時開示公表日の前営業日、直近1ヶ月、3ヶ月及び6ヶ月の平均価格)に対してそれぞれ9.43%、9.97%、4.55%のプレミアム、1.35%のディスカウント(プレミアム率及びディスカウント率は、小数点第三位を四捨五入して算出。)が加算されており、また、2021年4月のCVCレターの受領を端緒として、市場に当社の非公開化取引への期待が生じ、その後も当該期待が維持され市場株価に反映されていると思われるところ、一部報道機関によって当社がCVCレターを受領したとの報道がなされた2021年4月7日の前営業日2021年4月6日の当社株式の終値3,830円に対して20.63%のプレミアムが加算されている。
本株式価値算定書の内容についてのUBS証券及び野村證券それぞれの特別委員会に対する説明及び特別委員会との質疑応答によれば、特別委員会は、株式価値の算定手法は不合理なものではなく、両アドバイザーが採用した当社の株式価値算定の過程及びその算定結果について適切なものであると判断した。それゆえ、特別委員会は、当社株式の株式価値の評価に当たり、UBS証券及び野村證券が作成した本株式価値算定書に依拠することができると判断した。
UBS証券及び野村證券は、特別委員会の要請に基づき本連結財務予測を当該算定に用いた。特別委員会は、本連結財務予測について、執行部から、その策定過程において、当該計画の数値概要、その前提となる経営環境(足下のマクロ経済環境の変動、サプライチェーンの混乱を含む。)、事業分野毎の目標・基本戦略・具体的な施策等の説明を受け、その合理性に関して質疑応答を行い、必要に応じて意見を述べた。当該意見を反映した本連結財務予測について、特別委員会は、その主な前提条件の合理性及び数字の正確性について、執行部の作成した見込みを採用しないことを取締役会に対して推奨すべきと考えられるような重大な問題はないと判断した。株式価値算定の基礎としてより適切なものはなかった。
上記のとおり、当社が保有するキオクシアグループの情報が限定的であり、また、情報開示についてキオクシアグループから十分な協力が得られなかったため、当社が保有するキオクシアHD株式の価値について、UBS証券及び野村證券は、2018年の再出資価額、過去財務数値(キオクシアHDの当社における連結簿価を含む。)、類似企業比較等を総合的に勘案し、それぞれ評価している(キオクシアHDの当社における連結簿価は3月23日付適時開示公表時から再々答申書作成時点までに約947億円切り下げられている。)。特別委員会はUBS証券及び野村證券の手法のいずれも不合理なものではないと判断しており、キオクシアグループの情報が限定的であるという制約はあるものの、本株式価値算定書は取引条件の公正性・妥当性の判断において依然として重要な参照資料であると考えている。もっとも、特別委員会は、あわせて、当社の価値に占めるキオクシアHD株式の価値の比重の大きさにも鑑みると、本株式価値算定書の参照価値を慎重に考える必要があることも認識した。
なお、2023年4月13日開催の当社取締役会において当社の2023年度予算が正式に承認されたが、当社の予算確定に係る通常の実務に従って精緻化して確定したものであり、本連結財務予測について、当社の株式価値を検討するにあたって実質的に重要な内容の変更はなかった。そして、3月23日付適時開示公表から再々答申書作成まで約4ヶ月半しか経過しておらずその間におけるマクロ経済環境の見通しや当社グループの事業環境にも大きな変化はないこと、その他に株式価値に重大な影響を与えるような事情又は3月23日付適時開示公表後の変化も認識していないことから、特別委員会は、再々答申書作成時点においても、本連結財務予測を用いて株式価値算定を行うことが適当であり、本株式価値算定書は有効であると考え、再々答申書の作成にあたって本株式価値算定書をあらためて取得し直すことはしなかった。なお、特別委員会は、3月23日付適時開示公表後も随時、UBS証券及び野村證券に対して株式価値の試算を依頼してその報告を受けている。
(3) 取引実行の蓋然性
JIPによれば、再々答申書作成時点において、本取引の実行のために必要な競争法、対内直接投資等に係る規制上のクリアランス取得が完了していることが確認されたとのことである。
なお、当社の本公開買付け決済時の現預金残高が本LBOローンの貸付実行に係る前提条件として定められている金額を下回る見込みであることが3月23日付適時開示公表後判明していたが、執行部において現預金の維持・積上げのための施策を実行しつつ、JIPにおいても金融機関との対応協議を行った結果、金融機関より、JIPに対して、2023年8月4日付でシニアローン1兆2,000億円、メザニンローン2,355億円の融資証明が発行されており、本LBOローンの貸付実行についての懸念は解消されている。
(4) 公開買付契約の内容
JIPの当初のマークアップは、公開買付けの開始の前提条件として、Financing-out条項やNo-MAE条項、当社の事業や業務に関する広範囲に及ぶ表明保証を前提とした表明保証違反の不存在、対抗提案の不存在等を求め、また、早期のクリアランス取得に向けたJIPのコミットメントを確保するために当社が求めたリバース・ブレークアップ・フィー(以下「RBF」という。)の支払義務を削除する等、公開買付契約において考慮された取引実行の蓋然性担保の機能を減殺するものであったが、当社とJIPとの間のやりとりの結果、公開買付けの開始の前提条件は限定されたNo-MAE条項等に可及的に限定されるとともに、早期のクリアランス取得に向けたJIPのコミットメントを示すに足る金額水準で、かつ、JIPの帰責事由を前提としないRBFの支払義務が定められる等の譲歩が得られ、合意された公開買付契約の内容は、取引実行の蓋然性を担保することに資すると考えられる条件であると評価することができる。
(5) 本取引の手法
本取引の手法について、一段階目として総議決権数の66.7%に相当する下限を設定した上で本公開買付けを行い、二段階目として株式売渡請求又は株式併合を行う手法は、提案されている本取引のような非公開化の手法としては一般的に採用されている方法である。また、対価の種類においても、現金であることから、対価の分かり易さ、並びにその価値の安定性及び客観性が高いという点で望ましく、当社の完全子会社化を迅速に行うという要請と、一般株主等による十分な情報に基づく適切な判断の時間と機会の確保を両立させることができるという観点でも、特に株式等を対価とする株式交換等の組織再編よりも望ましいと考えられる。また、強圧性が排除されていることについても上記のとおりである。
(6) 特別委員会の見解
(a) 本取引について
(ア) 再答申書作成時の特別委員会の意見
JIPとの長期にわたる交渉においては、本公開買付価格は2023年3月3日付最終提案書上の4,610円から4,620円に上積みされたものの、本公開買付価格は当初の法的拘束力のある提案価格を下回る。特別委員会は、原答申書において、かかる本公開買付価格による本公開買付けは、当社の一般株主にとって投資回収のための合理的な売却機会であるとは考えられるものの、一般株主に対し明らかに本公開買付けへの応募を当該時点で推奨することができる水準には達していないと考えていた。もっとも、これはその間のマクロ経済環境の変化や当社の業績悪化等によるものであると考えられ、そのような事態の発生は交渉プロセスの公正性を疑わせるものではなく、当社が株主にとってできる限り有利な条件で本取引が行われることを目指して合理的な努力を行ったことを否定するものではないと考えられる。そして、3月23日付適時開示の公表から約2ヶ月半が経過しているが、本プロセスに参加していた投資家からもその他の投資家からも、当社取締役会に本取引の再考を促すような提案又は問合せを受領しておらず、当社株価は本公開買付価格を下回って推移しており、また、3月23日付適時開示の公表前後を通して行った10を超える株主とのエンゲージメントにおいても当社が実施した本プロセスについて評価する意見を受けており、特別委員会の本公開買付価格の妥当性についての確信は高まっている。
当社は厳しい経営環境に直面している中、中長期にわたって当社の業績と資産状態を変革していくために、本取引により当社が安定した経営基盤を構築し、株主からの統一的な支援を得ることは当社にメリットをもたらし、ひいては、本取引は企業価値の向上に合理的に資すると考えられるが、3月23日付適時開示の公表後、再答申書作成時点までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性をあらためて認識している。島田CEOから、当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には、顧客の離反及び従業員の離職を招く可能性があり、2023年度予算における2024年度、2025年度の計画値の実現は困難になることが懸念されるとの見解が示されているところ、特別委員会としてもかかる見解を否定する理由はない。
上場企業である当社にとって、経営基盤の不安定さが当社の企業価値の向上、ひいては株主の共同の利益を確保することを困難にしている状況においては、非公開化が特に有力な戦略的選択肢になるところ、約1年にわたる完全に競争的で公正なプロセスの結果得られた唯一の完成した提案の下での本公開買付価格は、当社の非公開化への期待が市場株価に反映される端緒になったと思われるCVCレターの前の市場株価に対して第三者による非公開化を目的とした他の公開買付けの事例におけるプレミアム水準との比較において相応のプレミアムが付されていることやその時点以降の外部経済環境の変化や業績の悪化といった事情も併せて考えると、公正・妥当なものであり、当社の株主に対して本公開買付けへの応募を推奨するに値するものであると考えられる。
たしかに、本公開買付価格は、3月23日付適時開示の公表時点において、UBS証券がDCF法により算定した1株当たり株式価値のレンジを、下限との差は僅少ではあるものの外れており、野村證券がDCF法により算定した1株当たり株式価値のレンジの下位25%のレンジに留まっているものの、DCF法による株式価値は、本連結財務予測の最終年度(2025年度)の計画値に相当程度依存するところ、直近の2022年度を含め過去20年間を見ても当社が業績見込みを達成した回数は少ないことを踏まえると、当社の業績見込みの信憑性は総じて低いと言わざるを得ず、また、本連結財務予測を個別に見ても、本連結財務予測は、2024年度及び2025年度において、デバイス事業、エネルギー事業、インフラ事業を中心とする各事業の利益率の改善に起因する大幅な増益を見込んでおり、実現のハードルが低くない計画に基づくものであることに加え、島田CEOから当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には2023年度予算における2024年度及び2025年度の計画値の実現が危ぶまれるとの見解が示されているものであって、本連結財務予測の最終年度(2025年度)の計画値の達成可能性には疑義があることを考慮する必要がある。これらの事情に鑑みれば、本連結財務予測を前提とするDCF法に基づく株式価値算定に全面的に依拠することはできず、信用性の低さに鑑みて一定程度割り引いて評価することが適当であるとも考えられ、本公開買付価格がDCF法のレンジの下限近傍に位置することは、完全に競争的で公正な本プロセスを通して得られた本公開買付価格が公正・妥当であることを否定するものではないと考えられる。
2023年3月23日時点において、特別委員会は、本公開買付価格が、LBO市場の弱さ、金利の上昇及び不安定な為替、マクロ経済の不透明な見込み、キオクシアグループが現在置かれている厳しい事業環境その他の事情が本公開買付価格に影響を与えたと認識しており、そのような事情が将来変化することがあれば本公開買付価格の評価も変わり得ることから、応募推奨をするか否かを当該時点で決定するよりは本公開買付け開始により近接した時点であらためて検討・意見形成する方が適切であろうと判断したものであった。しかしながら、3月23日付適時開示の公表から約2ヶ月半が経過した再答申書作成時点において、マクロ経済環境を含む外部的な状況が改善する見込みは当面認識されていないことに加え、キオクシアHDの当社における連結簿価は3月23日付適時開示の公表時から再答申書作成時点までに約495億円切り下げられている。
そのほか、公開買付者による更なる買収資金の上積みを期待できる事情もなく、上記のような外部的な事情等に改善が見られたとしても、JIPがそれを理由に本公開買付価格を上げる可能性は著しく低いと評価でき、他方で、上記のとおり、3月23日付適時開示公表後、再答申書作成時点までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、本取引により当社が安定した経営基盤を構築することに対する期待ひいてはその重要性を再認識している。
また、キオクシアグループに関する情報が限定されており当社の価値に占める比重の大きいキオクシアHD株式の評価に一定の限界があることも特別委員会の判断を困難にした事情であったが、キオクシアグループに関して現時点で得られている以上の情報を得られる見込みはなく、これを理由に当社取締役会による判断を先送りにすべきではないと考えられる。
さらに、本取引における買収手法及び対価の種類は公正かつ合理的である。JIP、JIPのリーガル・アドバイザー及び執行部は、当社の異なる事業の多様性及び規模や国家機密に関わる戦略分野への関与等に鑑み、当社の非公開化にあたっての日本を含む各国における競争法、対内直接投資等に係る規制上のクリアランスの取得の蓋然性を検討してきたが、法的助言に基づき、本取引に係るクリアランスの取得に関して長期化する又は困難になる具体的な懸念はないとの結論に至った。また、公開買付契約の条件も取引実行の蓋然性を合理的に担保するものであると評価できる。
(イ) 再々答申書作成時点の特別委員会の意見
特別委員会の本取引の手法・取引条件の公正性・妥当性についての意見に再答申書作成時点から変更はない。
再答申書作成時点からの事情の変化として、上記のとおり、キオクシアHD及びBain SPCがキオクシア取引相手方との間でキオクシア取引について協議を進めていると理解しているが、本取引の条件の公正性・妥当性の検討にあたってのキオクシア取引情報の参照価値は現時点においては低いと考えられる。
(b) その他の選択肢について
その他参加者からは法的拘束力のある具体的な提案を得られず、本公開買付価格の公正性及び妥当性を検証する比較対象になる提案がなかった。
特別委員会は、完全に策定されたPlan Bが効果的に実行されれば、非中核事業を売却し競争優位のある事業に集中することにより、株主に、より大きな価値をもたらし、また、効率的なバランスシートとより大きな株主還元を目指すことができる可能性があることを認識している。しかし、特別委員会は、過去20年間を見ても当社が業績見込みを達成した回数は少なく、また、短期の見込みでさえも達成することが困難であることを認識している。2022年度においても、営業利益において期初の業績予想1,700億円から約600億円の引下げ、純損益において期初の業績予想1,750億円から約495億円の引下げでの通期の着地となった。
Plan Bは本連結財務予測の達成を前提としているが、現執行部の2022年度の未達を含む当社の事業計画目標未達の歴史を踏まえると、本連結財務予測には通常より低い水準の信用しかおくことができず、本取引への株主の賛同さえ得られればPlan Bに比べて大幅に短い期間に実現することを相当程度確実に見込むことができる本公開買付価格と比較するにあたっては、Plan Bから合理的に見込める株主価値は相当程度割り引く必要があると言わざるを得ない。
3月23日付適時開示公表後、再々答申書作成時点までの間に、執行部によると、顧客、取引先や従業員を含む様々なステークホルダーから本取引についての前向きな反応を受けており、島田CEOから、非公開化が実現せず当社の経営基盤が不安定な状況が続いた場合には、顧客の離反及び従業員の離職を招く可能性があり、2023年度予算における2024年度、2025年度の計画値の実現は困難になることが懸念されるとの見解が示されているところ、Plan Bから合理的に見込める株主価値についての考えを変更すべき事情はない。
よって、Plan Bの業績見込み及びそこから導かれる潜在的な価値は特別委員会の本取引を退けるべきではないという特別委員会の見解を変えさせる根拠となるものではない。
(iv)本諮問事項(i)乃至(iii)を踏まえて本取引が当社の一般株主にとって不利益でないか否か
上記(i)及び(ii)のとおり、本取引は当社の企業価値の向上に合理的に資するものであり、公正かつ透明性のある手続を通じて当社の一般株主の利益への十分な配慮がされていると考えられる。なお、本公開買付価格については、上記(iii)のとおり公正・妥当なものである。また、本公開買付けには総議決権の66.7%の下限が付されており、本公開買付けが成立した後に予定されている当社の非公開化のための株式売渡請求又は株式併合では、本公開買付けに応募しなかった株主に対して、1株当たり本公開買付価格と同額の金銭が交付される予定であり、その取引条件や手続の公正性は確保されている。また、株式売渡請求の場合には株主の裁判所に対する価格決定申立権が、株式併合の場合には当社の株主に株式の買取請求権及びそれに伴う裁判所に対する価格決定申立権が確保されている。以上から、本取引は当社の一般株主にとって不利益なものでないと考えられる。
(v)本諮問事項(i)乃至(iv)を踏まえて、取締役会が本取引に賛同・応募推奨すべきか否か
上記(i)乃至(iv)を踏まえ、特別委員会は、取締役会は、本公開買付けを含む本取引に賛同し、当社株主に対して、本公開買付けに応募することを推奨すべきであると考える。
③取締役会及び特別委員会における外部の法律事務所からの助言の取得
当社取締役会及び特別委員会は、意思決定の公正性及び適正性を担保するために、公開買付者及び当社から独立したリーガル・アドバイザーとして長島・大野・常松法律事務所及びモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所を選定し、両事務所より、本取引の諸手続、本取引に関する当社取締役会及び特別委員会の意思決定の方法・過程、その他本取引に関する意思決定にあたっての留意点等に関する法的助言を受けております。なお、長島・大野・常松法律事務所及びモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所は、公開買付者及び当社の関連当事者には該当せず、本取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
④取締役会及び特別委員会における独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関からの助言及び株式価値算定書の取得
当社の取締役会及び特別委員会は、公開買付者及び当社から独立した独自のフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関としてUBS証券を選任の上、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(3)算定に関する事項」の「① 当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得」に記載のとおり、UBS証券に対して、当社株式の株式価値の算定を依頼しました。UBS証券は、本公開買付けにおける算定手法を検討した結果、市場株価平均法、類似企業比較法、DCF法の各手法を用いて当社株式の株式価値の算定を行い、当社は2023年3月23日付でUBS証券から株式価値算定書(UBS証券)を取得いたしました。なお、当社は、UBS証券から本公開買付価格の公正性に関する意見書(フェアネス・オピニオン)を取得しておりません。また、UBS証券は、公開買付者及び当社の関連当事者には該当せず、本取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
⑤当社の執行部における外部の法律事務所からの助言
当社の執行部は、本プロセスを主導し、本取引を検討するに当たり、その公正性及び適正性を担保するために、公開買付者及び当社から独立したリーガル・アドバイザーとして西村あさひ法律事務所を選定し、本プロセスの実行及び本取引の検討に係る留意点等に関する法的助言を受けております。なお、西村あさひ法律事務所は、公開買付者及び当社の関連当事者には該当せず、本取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
⑥当社の執行部における独立したフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関からの助言及び株式価値算定書の取得
当社の執行部は、公開買付者及び当社から独立した独自のフィナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として野村證券を選任の上、8月7日付適時開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(3)算定に関する事項」の「① 当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得」に記載のとおり、野村證券に対して、当社株式の株式価値の算定を依頼しました。野村證券は、本公開買付けにおける算定手法を検討した結果、市場株価平均法、類似会社比較法、DCF法の各手法を用いて当社株式の株式価値の算定を行い、当社は2023年3月23日付で野村證券から株式価値算定書(野村證券)を取得いたしました。なお、当社は、野村證券から本公開買付価格の公正性に関する意見書(フェアネス・オピニオン)を取得しておりません。また、野村證券は、公開買付者及び当社の関連当事者には該当せず、本取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
⑦当社における取締役全員の承認
当社取締役会は、野村證券及びUBS証券から受けた財務的見地からの助言、野村證券及びUBS証券からそれぞれ取得した本株式価値算定書の内容、並びに長島・大野・常松法律事務所及びモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所から受けた法的助言を踏まえつつ、再々答申書において示された特別委員会の判断内容を最大限尊重しながら、本公開買付けを含む本取引に関する諸条件の内容について慎重に協議・検討を行った結果、上記「1.本株式併合の目的」に記載のとおり、2023年8月7日開催の当社取締役会において、当社の全ての取締役11名が審議及び決議に参加し、決議に参加した全ての取締役の全員一致により、本公開買付けに関し、本公開買付けに対して賛同するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨することを決議いたしました。
⑧他の買付者からの買付機会を確保するための措置
上記「① 入札手続の実施」に記載のとおり、当社は、本プロセスの実施をその開始当初から公表し、潜在的な投資家やスポンサーに対して戦略的選択肢に関する提案の募集を行い、幅広く戦略的選択肢の提案を受ける機会を確保することで、公開の入札プロセスを通じた積極的なマーケット・チェックを実施しており、かつ、競争環境が維持された中で、企業価値の向上及び株主価値の最大化等の観点から評価基準を置き、当該評価基準に基づく総合的な評価を合理的に行うことで、公開買付者を選定しております。したがって、公開買付者以外の者による当社株式に対する買付け等の機会は既に十分に確保されたものと考えております。
加えて、本公開買付け自体の期間として、法令に定められた最短期間である20営業日に比して、比較的長期間である30営業日に設定されていることに加え、3月23日付適時開示において本公開買付価格を含む一連の取引条件が公表されて以降2023年8月7日まで、約4ヶ月半という長期の期間が確保されていたことから、本公開買付け開始の前後を通じて、当社の株主において本公開買付けに応募するかについて適切な判断機会が確保されるとともに、当社株式について、公開買付者以外の者が本取引の内容を踏まえた上で当社株式に対する買付け等を行う機会が十分に確保されていると考えております。
なお、8月7日付適時開示の「4.本公開買付けに関する重要な合意等」に記載のとおり、本公開買付契約においては自ら又は第三者を通じて、公開買付者以外の者との間で、本取引又はこれと競合若しくは相反する取引(公開買付け、組織再編その他方法を問わず当社の普通株式を取得する取引、当社グループの株式又は事業の全部又は重要な一部を処分する取引を含みます。)に関する具体的かつ真摯な勧誘、提案、協議、交渉、情報提供、第三者の提案若しくは要請に対する応答、契約の締結又は実行の一切を行わず、又はその子会社をして行わせてはならないものとする条項が定められているため、当社として他の買収者による買収提案が行われるよう積極的に働きかけることはできないこととなりますが、上記のとおり、本プロセスにおいて既に積極的なマーケット・チェックを通じて候補者を限定することなく当社に対する戦略的な提案を募ってきたことに鑑みると、本公開買付契約の締結後に当社から積極的に対抗提案について勧誘や交渉等を行うことが制限されることによって他の買収者による買収提案の機会の減殺に繋がる可能性は限定的であると考えており、また、本公開買付契約においても、本公開買付けの成立前において、当社の勧誘によらずに他の買収者から本公開買付価格を上回る取得対価(金銭を対価とするものに限る。)により当社の普通株式(自己株式を除く。)の全部を取得する旨の具体的かつ実現可能性のある真摯な書面(当該取得に関して必要となる競争法令等及び投資規制法令等上の届出その他政府機関等に対する一切の手続について、合理的な根拠に基づき、①その種類、地域及び所要期間に係る想定が具体的に特定して記載されており、かつ②そのすべてについて合理的期間内の取得の合理的な蓋然性がある旨が記載されていることを要する。)による提案(以下「本対抗提案」といいます。)を受けた場合であれば、当社が本対抗提案について交渉等を行うことは許容されております。
また、8月7日付適時開示の「4.本公開買付けに関する重要な合意等」に記載のとおり、本公開買付契約上、当社は、本対抗提案を受領した場合、(i)賛同意見を維持することが当社の取締役の善管注意義務違反を構成する合理的な可能性がある旨の外部弁護士の意見書の提出を受けること、(ii)本対抗提案の受領及び当該意見書の取得について直ちに公開買付者に通知し、当該通知後5営業日後の日又は公開買付期間の末日の5営業日前の日のいずれか早い日までの間、本取引に係る再提案の機会を与えるために直ちに公開買付者と誠実に協議すること、及び、(iii)当該協議の結果、公開買付者が、本対抗提案が提示する公開買付価格を超える価格に引き上げる旨の再提案を行わないこと、という条件の下で賛同意見の変更又は撤回を行うことができるものとされております。当社がかかる賛同意見の変更又は撤回を行ったことにより本公開買付契約が解除された場合、当社は公開買付者に対して20億円のブレークアップ・フィーを支払う必要がありますが、このブレークアップ・フィーの金額水準は、本取引の対価の総額の約0.1%であり、ブレークアップ・フィーが合意された他社の非公開化事例との比較においても相当低廉な水準に留まっております。また、本プロセスにおいて当社及び公開買付者が相当のリソースを割いて本取引の検討を継続してきたこと、既に積極的なマーケット・チェックを通じて候補者を限定することなく当社に対する戦略的な提案を募ってきたことに鑑みれば、当該水準のブレークアップ・フィーは実務的にも合理的な範囲内のものといえ、実質的に当社の株主等に対して本取引を承認することを強制する、あるいは、株主にとってより望ましい内容の対抗提案が出される機会を阻害する効果を持つような性質のものではないと考えております。
⑨当社の株主が本公開買付けに応募するか否かについて適切に判断を行う機会を確保するための措置
公開買付者は、8月7日付適時開示の「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項等について)」に記載のとおり、当社を公開買付者の完全子会社とするための一連の手続において、公開買付けに応募されなかった当社の株主の皆様(公開買付者及び当社を除きます。)に対しては、最終的に金銭を交付する方法が採用される予定であり、その場合に当該各株主の皆様に交付される金銭の額については、本公開買付価格に当該各株主の皆様が所有していた当社株式の数を乗じた価格と同一になるよう算定する予定であることから、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募するか否かについて適切に判断を行う機会を確保し、これをもって強圧性が生じないように配慮しているといえます。
また、公開買付者は、法令に定められた公開買付けに係る買付け等の最短期間は20営業日であるところ、公開買付期間を30営業日としております。公開買付期間を比較的長期にすることにより、当社の株主の皆様に対して本公開買付けに対する応募につき適切な判断機会を確保しているといえます。
4.本株式併合の効力が生ずる日
2023年12月22日(予定)
以上