有価証券報告書-第9期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
各セグメントの説明における前期の実績値については、新セグメントで組み替えた値を使用しております。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しておりますが、当連結会計年度の損益に与える影響は軽微であります。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
財政状態
当連結会計年度末の資産残高は2兆6,343億円となりました。資産の部では、販売用不動産への投資が進捗した一方、固定資産の売却や株式会社東急ハンズの連結除外等により、前連結会計年度末から合計180億円減少しました。当連結会計年度末の負債残高については1兆9,910億円となり、有利子負債の減少等から前連結会計年度末から合計525億円減少しております。当連結会計年度末の純資産残高については6,433億円となり、利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末から合計346億円増加しております。
経営成績
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化する中、ワクチン接種の進展や行動制限緩和等により、社会・経済活動の正常化に向けた取り組みが進捗し、力強さを欠きながらも持ち直す動きが見られました。一方、原油等の原材料価格の高騰等により、世界的な物価上昇と金融引き締めの動きが見られる等、経済全体の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループにおいて、主に第1四半期連結会計期間は、政府からの緊急事態宣言や自治体からの要請等を踏まえ、商業施設・運営施設・営業店舗の臨時休業や営業時間の短縮、第2四半期連結会計期間以降も営業時間の短縮等、影響は継続しましたが、前連結会計年度に発令された緊急事態宣言に比べ、対象地域や規制内容が限定的であったため、業績は大幅に回復しております。また、賃貸オフィスは大型オフィスビルの通期稼働、アセット売却は活況な不動産売買市況により売却益が増加、住宅市場では、住まいに対する顧客ニーズの多様化、低金利環境の継続等により、住宅分譲や売買仲介が好調に推移する等、当連結会計年度の営業利益は、ホールディングス体制への移行前も含めて、過去最高となりました。
当連結会計年度の業績は、売上高9,890億円(対前期+9.0%)、営業利益838億円(同+48.3%)、経常利益728億円(同+56.4%)、特別利益として関係会社株式売却益等71億円(前期は特別利益73億円)、特別損失として減損損失等240億円(前期は特別損失120億円)を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益351億円(同+62.1%)で増収増益となりました。
<セグメント別業績>
イ.都市開発事業
売上高は3,258億円(対前期+2.9%)、営業利益は519億円(同+24.5%)となりました。
前連結会計年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、商業施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じましたが、当連結会計年度は、前期に比べ影響は限定的となっております。
下記売上高内訳の「都市(賃貸オフィス)」では、2020年9月に開業した「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」の通期稼働、「都市(賃貸商業施設)」では、東急プラザを始めとする当社グループの主要な商業施設の新型コロナウイルス感染拡大影響の一定の回復、「住宅分譲」では、分譲マンションの計上戸数の増加等により、増収となりました。一方で、「住宅その他」に含まれる賃貸住宅等のアセット売却の減少、「都市その他」に含まれるアセット売却は、物件数の減少により減収となったものの、活況な不動産売買市況により売却益は増加したこと等から、セグメント全体では増収増益となりました。
オフィスマーケットは、テレワーク等の働き方の多様化により、オフィスビルの需要縮小等が懸念されておりましたが、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しており、空室率(オフィスビル・商業施設)は1.3%と低水準を維持しております。
分譲マンションは、住宅の質の改善ニーズ等により実需層が強く、引き続き堅調な販売動向となっております。当期の分譲マンションは、「ブランズタワー豊洲」(東京都江東区)や「ブランズタワー芝浦」(東京都港区)等を計上いたしました。なお、マンションの次期売上予想に対する契約済み割合は58%(同+4P)となっております。
賃貸オフィス・賃貸商業施設:賃貸床面積・空室率
ロ.戦略投資事業
売上高は670億円(対前期+42.7%)、営業利益は147億円(同+22.0%)となりました。
下記売上高内訳の「インフラ・インダストリー」は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加、「海外」は、米国における物件の売却配当の増加等により、増収増益となりました。
再生可能エネルギー事業は、稼働施設が計画通り増加する等、順調に拡大しており、全施設稼働後の総定格容量(持分換算前)は、1,311MWの規模となります。
再生可能エネルギー発電施設
※定格容量は、稼働済み発電施設の持分換算前の容量を記載しております。
ハ.管理運営事業
売上高は3,838億円(対前期+9.3%)、営業損失は1億円となりました。
前連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、運営施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じました。事業活動の影響について、当連結会計年度は、前期に比べ、回復基調にあるものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、その影響は継続しました。
下記売上高内訳の「マンション管理」「ビル管理」では、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の自粛や管理業務の休止等からの反動増となりました。「ホテル」「レジャー」では、前期に比べ、一定の回復をしており、「ウェルネスその他」におけるアセット売却収益の計上等により、セグメント全体では増収増益となりました。
なお、2022年3月末のマンション管理ストックは832千戸(うち総合管理戸数528千戸)となっております。
※ホテル :ハーヴェストクラブ、東急ステイ、リゾートホテル等
※レジャー :ゴルフ場、スキー場等
※ヘルスケア:シニア住宅、フィットネス施設等
※ハンズ :2022年3月31日に株式会社東急ハンズの全発行済株式の譲渡に伴い、当社の連結範囲から除外
ニ.不動産流通事業
売上高は2,345億円(対前期+10.5%)、営業利益は261億円(同+38.3%)となりました。
東急リバブル㈱における売買仲介のリテール部門・ホールセール部門は、活況な不動産流通市場により取扱件数及び平均取扱価格の上昇、また不動産販売における大型物件の計上等により、大幅な増収増益となりました。
※リテール、ホールセールの合計値です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,539億円となり、前連結会計年度末と比較して356億円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払△353億円等により資金減少の一方、税金等調整前当期純利益559億円、減価償却費433億円等により、765億円の資金増加となりました。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の売却217億円、固定資産の売却202億円等の資金増加の一方、固定資産の取得△463億円、有価証券及び投資有価証券の取得△299億円等により、318億円の資金減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の調達760億円等により資金増加の一方、長期借入金の返済△1,428億円、社債の償還△201億円等により、813億円の資金減少となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産、受注及び販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における我が国経済は、変異株の出現により新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する一方、ワクチン接種や行動制限緩和など、社会・経済活動の正常化に向けた取り組みが進捗し、力強さを欠きながらも持ち直す動きが見られました。
不動産業においては、オフィスビル市場は、テレワークの普及等に伴い、平均空室率の上昇や賃料水準の下落が続く一方、コミュニケーションの場として、またウェルビーイングの充実などの観点から、よりグレードの高いオフィスを求める動きも見られました。不動産投資市場では、金融緩和による良好な資金調達環境が維持されたことから、投資家の物件取得意欲は引き続き旺盛で、厳しい競争が継続いたしました。また分譲住宅市場は、低金利政策が継続するなか、2020年度にコロナ禍による販売活動への制約から供給が減少した反動もあって新築物件の販売が堅調であったほか、中古マンションの売買取引も活況を呈しました。
一方、都市部の商業施設やホテル・リゾート関連市場では、行動制限の緩和により集客は徐々に回復しつつあるものの、長距離移動や人混みのリスクを避ける傾向は続いており、依然として厳しい状況となっております。
財政状態については、当期末の資産残高は2兆6,343億円で、固定資産の売却や株式会社東急ハンズの連結除外等により、対前期末180億円減少、当期末の負債残高についても有利子負債の減少等により、1兆9,910億円と、対前期末525億円減少しております。当期末の純資産残高については利益剰余金等が増加し、6,433億円と、対前期末346億円増加しております。財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・都市開発事業セグメント
都市事業では、「都市(賃貸オフィス)」では、2020年9月に開業した「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」の通期稼働、「都市(賃貸商業施設)」では、東急プラザを始めとする当社グループの主要な商業施設の新型コロナウイルス感染拡大影響からの一定の回復、アセット売却は活況な不動産売買市況により売却益が増加となっております。住宅事業では、賃貸住宅等のアセット売却の減少の一方で、「住宅分譲」では、分譲マンションの計上戸数の増加等により増収となり、セグメント全体では増収増益となりました。
オフィス市場は、テレワーク等の働き方の多様化により、オフィスビルの需要縮小等が懸念されておりましたが、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しており、当社グループ保有物件における2022年3月末時点での空室率(オフィスビル・商業施設)は1.3%と、引き続き低水準を維持しております。当社ポートフォリオにおいては、新型コロナウイルス感染拡大による空室率及び賃料の大きな悪化影響は見られませんが、オフィス市場の景気や経済に対する遅行性や、各テナント企業のアフターコロナのオフィス戦略には注視が必要です。またコロナ禍を受け従業員の働き方の多様化、企業の環境や健康経営への関心の高まりなど、社会から問われる課題は高度化している中、東急不動産㈱のオフィスでは、テナント企業に働く場所を提供するだけでなく、ハード・ソフトの両面で様々な付加価値サービスを提供するため、新しい働き方として「GREEN WORK STYLE」の提案を行っております。センターオフィスを中心にシェアオフィスなど様々なワークプレイスの提供や、再生可能エネルギーを活用した環境への取り組み、従業員の健康やライフスタイルを充実させる取り組みなど、当社グループのリソースを活用したワンストップでのご提案により、テナント企業の企業価値向上と従業員のウェルビーイングに貢献してまいります。
大型開発プロジェクトについては、2020年9月に開業した当社グループ最大規模のオフィスビルである「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」は開業時より満室で稼働しており、今後の竣工物件としては、2022年7月竣工予定の「九段会館テラス」、2023年11月竣工予定の「渋谷駅桜丘口地区再開発計画」等、「広域渋谷圏」の内外において、複数の開発案件が進行しております。
商業施設については、2021年3月期は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、商業施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じましたが、2022年3月期は、前期に比べ影響は限定的であり、東急プラザを始めとする当社グループの主要な施設は一定の回復をしております。また新型コロナウイルスを契機として、EC化の更なる進展に伴い、都心施設を中心に体験型消費・共感型消費に対応するテナントの誘致にも注力しております。
環境対応として、2022年には東急不動産㈱が単独で保有する全てのオフィスビル・商業施設における消費電力を、東急不動産の発電所等が供給する再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えることを決定したほか、2025年度に新築ビル(着工件数ベース)の約50%をZEB水準とすることを目標に掲げるなど、先駆的に取り組んでおります。
分譲マンション市場は、都心立地や利便性を重視する顧客志向、在宅勤務を契機とした住宅の質の改善、住宅ローン金利の低位安定等、購買環境が引き続き良好なこともあり、実需層を中心に、当社グループのマンション販売は堅調に推移しており、2023年3月期の期初時点での分譲マンションの通期売上予想に対する契約済割合は58%となっております。「BRANZ(ブランズ)」のブランドで首都圏や関西圏を中心に分譲マンション事業を行っており、2021年12月に環境重視の取り組みを積極的に推進するため、「環境先進マンション」としてリブランディングいたしました。2030年度までに、全ての新築分譲マンションでZEHを標準仕様とし、また全物件に太陽光パネルを標準搭載してまいります。今後も好立地や希少性のある物件を厳選するとともに、持続的でより快適な暮らし心地と環境貢献したモノづくりに取り組んでまいります。建築工事費については、慢性的な人工不足や原材料価格の上昇によるコスト上昇の懸念等があり、引き続き状況を注視いたします。
2023年3月期の当セグメントにおいては、新規物件の取得環境が過熱する状況の中での厳選投資及び、「九段会館テラス」や渋谷駅周辺では最大規模の開発となる「渋谷駅桜丘口地区再開発計画」など、開発中の大型プロジェクトの着実な推進が重点課題となっております。また、分譲マンションの市況は、堅調に推移しており、引き続き着実に販売を進める方針です。
・戦略投資事業セグメント
「インフラ・インダストリー」は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加、「海外」は、米国における物件の売却配当の増加等により、増収増益となりました。
当社グループが、近年事業規模を拡大させてきた再生可能エネルギー事業は、FIT制度によって売電価格が固定されており、景気変動等に対する影響が少なく、安定的に収益に寄与する事業です。「ReENE(リエネ)」のブランド名で太陽光発電所、風力発電所などの開発に注力しており、稼働案件も着実に増やしております。外部環境としては、政府が2030年度の電源構成において、再生可能エネルギーの割合を36~38%に増加させる方針に加え、2050年までに温室効果ガスの排出を0にする2050年カーボンニュートラルを掲げており、今後も市場が拡大していくと思われます。
再生可能エネルギー事業の拡大では、積極投資による発電源の拡大と電力の地産地消など再生可能エネルギーの活用を進めるほか、パートナー共創による事業領域の拡大を図っていきます。さらなる規模拡大に向け、2022年3月末時点での定格容量1.3GW(持分換算前・開発中PJ含む)から2025年度には原子力発電所2基分相当となる2.1GWへ拡大させていきます。
物流施設は、EC市場の成長により需要拡大が見込める環境であり、再生可能エネルギーの活用やCASBEE認証取得等の環境配慮型施設や東急スポーツオアシスによる健康サポートなど、当社グループならではの付加価値を創出し、他社との差別化を図りながら、回転型事業として今後も事業の拡大を進めてまいります。
海外事業においては、米国投資事業のさらなる成長、アジアにおける事業領域の拡大など、対象国を厳選した上で、外部資金の積極活用により関与資産を拡大し、管理やアセットマネジメントなどのグループノウハウを活用した事業機会を創出するとともに、循環型再投資モデルの深化・発展を推進してまいります。
・管理運営事業セグメント
㈱東急コミュニティーにおける管理事業では、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の自粛や管理業務の休止等からの反動増となりました。東急不動産㈱のウェルネス事業では、「ホテル」「レジャー」では、前期に比べ、一定の回復をしており、「ウェルネスその他」におけるアセット売却収益の増加等により、セグメント全体では増収増益となりました。
マンション管理やビル管理の管理事業における事業環境は、管理民営化の拡大や管理難易度が高い複合施設管理の増加、改修及びリフォーム需要の拡大等が追い風である一方、新規物件管理受注環境の悪化や、近年の働き方の多様化等による人材確保難等については、対応すべき課題として認識しております。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、今後のデジタル化の進化を含めた省人化技術の活用等については、注視及び対応が必要です。重点課題としては、管理業においては、収益性や将来性を考慮した上でのストック拡大戦略の実行、工事業においては当社グループのシナジーを最大限活用した営業強化を進める方針です。
ウェルネス事業においては、2021年3月期は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、運営施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じました。2022年3月期は、前期に比べ、回復基調にあるものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、その影響は継続しましたが、今後は、ワクチン接種の進展等により国内需要の一定の回復が見込まれております。お客さまに安心してご利用いただけるよう感染症対策の徹底に努めながら、引き続き顧客体験価値向上を追求し、国内需要の取り込み強化と、スマート運営の実現など運営効率向上及びコスト構造改革に取り組んでまいります。
ハンズ事業は、2022年3月31日に㈱東急ハンズの全発行済株式の譲渡に伴い、当社の連結範囲から除外されております。ハンズは、1976年に当社グループの中核会社である東急不動産㈱の100%子会社として創業しました。DIYを中心とした提案型ライフスタイルショップとして小売事業を行ってまいりましたが、小売業界の競争が激化する中、ハンズのお客さまへの提供価値及び事業価値の最大化を図るためには、㈱カインズがベストオーナーであると判断し、譲渡することを決定いたしました。
・不動産流通事業セグメント
東急リバブル㈱における売買仲介のリテール部門・ホールセール部門は、活況な不動産流通市場により取扱件数及び平均取扱価格の上昇、また不動産販売における大型物件の計上等により、大幅な増収増益となりました。
仲介事業における事業環境は、リテール・ホールセールともに活況な不動産流通市場により、取扱件数及び平均取扱価格など、新型コロナウイルス発生前の水準を上回っております。今後も新築分譲マンション市場の縮小により中古住宅市場の拡大が見込まれる一方で、長期的にはITの進化等による事業構造の変化への注視が必要と認識しております。DX活用による営業活動の効率化や、リテール部門における取引件数の更なる積み上げ、ホールセール部門における事業領域の拡大を目的とした法人戦略の強化等を重点課題として考えております。
DX活用による営業活動の効率化として、「マンション価格査定AI」を導入いたしました。実際の査定データとデータサイエンスを活用し、誤差率を低水準に抑えたAIの開発に成功しました。東急リバブルでは年間30,000件超のマンション査定を首都圏エリアで受託しており、このAIを活用することで約15,000時間の削減効果を見込んでいます。削減された時間は、人の力でしか出来ない顧客接点の深化・拡大業務に充てることで、人的資源の最大化を図る方針です。そして将来的には、本システムの外部提供も検討してまいります。
また、当連結会計年度における、新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響は、以下のとおりです。主に第1四半期にBtoCの事業において、事業活動に影響が生じましたが、前連結会計年度に比べ、影響は限定的でした。
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大による主な影響
2023年3月期は、新型コロナウイルスの感染拡大の長期化や、国際情勢の緊迫化に伴う、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等、不透明な事業環境下ではあるものの、引き続き活況な不動産売買市況によるアセット売却益の増加や売買仲介の拡大、管理運営事業は、ワクチン接種の進展等による国内需要の一定の回復等を見込んでおります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の終息時期等により、実際の業績等は変動する可能性があります。
ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
「GROUP VISION 2030」で掲げた財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
「資産のコントロール」では、既存事業の効率性向上と事業ポートフォリオの最適化が課題です。既存事業の効率性向上の具体的な施策として、資産活用型事業においては、分譲事業、循環型再投資事業、高効率事業の拡大、大型開発プロジェクトの着実な稼働、外部資本活用やフィー収入の拡大、資産ポートフォリオ入替、低収益資産の売却などに取り組みます。人財活用型事業では、規模の成長と共に労働集約型からの脱却などにより効率性を向上します。
「負債・自己資本のコントロール」では、財務規律を維持しながら、市況悪化時にも耐えうる財務基盤を構築し、円滑な資金調達を目的とした格付維持向上を図ります。引き続き、期間利益の積上げによりD/Eレシオを改善してまいります。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの資産、有形固定資産及び無形固定資産の増加額の内訳は以下のとおりです。
当社グループの主要な資金需要は、都市開発事業セグメントにおけるオフィスビルや商業施設、マンション用地や賃貸住宅等の取得・開発資金、戦略投資事業セグメントにおける再生可能エネルギー発電施設、物流施設等の取得・開発資金、海外事業への出資、管理運営事業セグメントのウェルネス事業におけるリゾート施設等の取得・開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費の増加等により765億円の資金増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得や有価証券及び投資有価証券の取得等により318億円の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少等により813億円減少し、現金等の期末残高が1,539億円となりました。翌連結会計年度においても、オフィスビルや商業施設、再生可能エネルギー施設や物流施設等への投資が計画されておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの実績及び、翌連結会計年度における予想は以下のとおりです。
(注)2023年3月期(予想)の棚卸資産への投資は、投資活動によるキャッシュ・フローに含みます。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
各セグメントの説明における前期の実績値については、新セグメントで組み替えた値を使用しております。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しておりますが、当連結会計年度の損益に与える影響は軽微であります。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
財政状態
当連結会計年度末の資産残高は2兆6,343億円となりました。資産の部では、販売用不動産への投資が進捗した一方、固定資産の売却や株式会社東急ハンズの連結除外等により、前連結会計年度末から合計180億円減少しました。当連結会計年度末の負債残高については1兆9,910億円となり、有利子負債の減少等から前連結会計年度末から合計525億円減少しております。当連結会計年度末の純資産残高については6,433億円となり、利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末から合計346億円増加しております。
経営成績
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化する中、ワクチン接種の進展や行動制限緩和等により、社会・経済活動の正常化に向けた取り組みが進捗し、力強さを欠きながらも持ち直す動きが見られました。一方、原油等の原材料価格の高騰等により、世界的な物価上昇と金融引き締めの動きが見られる等、経済全体の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループにおいて、主に第1四半期連結会計期間は、政府からの緊急事態宣言や自治体からの要請等を踏まえ、商業施設・運営施設・営業店舗の臨時休業や営業時間の短縮、第2四半期連結会計期間以降も営業時間の短縮等、影響は継続しましたが、前連結会計年度に発令された緊急事態宣言に比べ、対象地域や規制内容が限定的であったため、業績は大幅に回復しております。また、賃貸オフィスは大型オフィスビルの通期稼働、アセット売却は活況な不動産売買市況により売却益が増加、住宅市場では、住まいに対する顧客ニーズの多様化、低金利環境の継続等により、住宅分譲や売買仲介が好調に推移する等、当連結会計年度の営業利益は、ホールディングス体制への移行前も含めて、過去最高となりました。
当連結会計年度の業績は、売上高9,890億円(対前期+9.0%)、営業利益838億円(同+48.3%)、経常利益728億円(同+56.4%)、特別利益として関係会社株式売却益等71億円(前期は特別利益73億円)、特別損失として減損損失等240億円(前期は特別損失120億円)を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益351億円(同+62.1%)で増収増益となりました。
| (単位:億円) | |||
| 前期 | 当期 | 比較 | |
| 売上高 | 9,077 | 9,890 | 813 |
| 営業利益 | 565 | 838 | 273 |
| 経常利益 | 466 | 728 | 263 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 217 | 351 | 135 |
| 有利子負債 | 14,788 | 14,217 | △571 |
<セグメント別業績>
| 売上高 | (単位:億円) | 営業利益 | (単位:億円) | |||||
| 前期 | 当期 | 比較 | 前期 | 当期 | 比較 | |||
| 合計 | 9,077 | 9,890 | 813 | 合計 | 565 | 838 | 273 | |
| 都市開発 | 3,167 | 3,258 | 91 | 都市開発 | 417 | 519 | 102 | |
| 戦略投資 | 469 | 670 | 200 | 戦略投資 | 121 | 147 | 27 | |
| 管理運営 | 3,512 | 3,838 | 325 | 管理運営 | △88 | △1 | 87 | |
| 不動産流通 | 2,123 | 2,345 | 222 | 不動産流通 | 189 | 261 | 72 | |
| 全社・消去 | △194 | △220 | △26 | 全社・消去 | △73 | △89 | △16 | |
イ.都市開発事業
売上高は3,258億円(対前期+2.9%)、営業利益は519億円(同+24.5%)となりました。
前連結会計年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、商業施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じましたが、当連結会計年度は、前期に比べ影響は限定的となっております。
下記売上高内訳の「都市(賃貸オフィス)」では、2020年9月に開業した「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」の通期稼働、「都市(賃貸商業施設)」では、東急プラザを始めとする当社グループの主要な商業施設の新型コロナウイルス感染拡大影響の一定の回復、「住宅分譲」では、分譲マンションの計上戸数の増加等により、増収となりました。一方で、「住宅その他」に含まれる賃貸住宅等のアセット売却の減少、「都市その他」に含まれるアセット売却は、物件数の減少により減収となったものの、活況な不動産売買市況により売却益は増加したこと等から、セグメント全体では増収増益となりました。
オフィスマーケットは、テレワーク等の働き方の多様化により、オフィスビルの需要縮小等が懸念されておりましたが、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しており、空室率(オフィスビル・商業施設)は1.3%と低水準を維持しております。
分譲マンションは、住宅の質の改善ニーズ等により実需層が強く、引き続き堅調な販売動向となっております。当期の分譲マンションは、「ブランズタワー豊洲」(東京都江東区)や「ブランズタワー芝浦」(東京都港区)等を計上いたしました。なお、マンションの次期売上予想に対する契約済み割合は58%(同+4P)となっております。
| (億円) | ||||||
| 前期 | 当期 | 比較 | 通期予想 (11月4日公表) | 対予想 | ||
| 売上高 | 3,167 | 3,258 | 91 | 3,350 | △92 | |
| 営業利益 | 417 | 519 | 102 | 516 | 3 |
| 売上高内訳 | (億円) | ||
| 前期 | 当期 | 比較 | |
| 都市(賃貸オフィス) | 459 | 510 | 51 |
| 都市(賃貸商業施設) | 386 | 396 | 10 |
| 都市その他 | 860 | 788 | △72 |
| 住宅分譲 | 1,060 | 1,399 | 339 |
| 住宅その他 | 403 | 166 | △237 |
賃貸オフィス・賃貸商業施設:賃貸床面積・空室率
| 2019年3月期末 | 2020年3月期末 | 2021年3月期末 | 2022年3月期末 | |
| 賃貸床面積(㎡) | 883,975 | 920,935 | 1,003,926 | 901,131 |
| 空室率 | 0.4% | 0.6% | 1.3% | 1.3% |
| 住宅分譲:分譲マンション | (戸) | |||
| 前期 | 当期 | 比較 | ||
| 計上戸数 | 1,777 | 2,194 | 417 | |
| 新規供給戸数 | 1,797 | 1,549 | △248 | |
| 契約戸数 | 1,767 | 1,833 | 66 | |
| 期末完成在庫 | 827 | 661 | △166 | |
ロ.戦略投資事業
売上高は670億円(対前期+42.7%)、営業利益は147億円(同+22.0%)となりました。
下記売上高内訳の「インフラ・インダストリー」は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加、「海外」は、米国における物件の売却配当の増加等により、増収増益となりました。
再生可能エネルギー事業は、稼働施設が計画通り増加する等、順調に拡大しており、全施設稼働後の総定格容量(持分換算前)は、1,311MWの規模となります。
| (億円) | ||||||
| 前期 | 当期 | 比較 | 通期予想 (11月4日公表) | 対予想 | ||
| 売上高 | 469 | 670 | 200 | 740 | △70 | |
| 営業利益 | 121 | 147 | 27 | 134 | 13 |
| 売上高内訳 | (億円) | ||
| 前期 | 当期 | 比較 | |
| インフラ・インダストリー | 345 | 528 | 182 |
| 投資運用 | 78 | 83 | 5 |
| 海外 | 46 | 59 | 13 |
再生可能エネルギー発電施設
| 2019年3月期末 | 2020年3月期末 | 2021年3月期末 | 2022年3月期末 | |
| 稼働施設数(件) | 16 | 30 | 38 | 66 |
| 定格容量(MW) | 246 | 487 | 730 | 882 |
※定格容量は、稼働済み発電施設の持分換算前の容量を記載しております。
ハ.管理運営事業
売上高は3,838億円(対前期+9.3%)、営業損失は1億円となりました。
前連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、運営施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じました。事業活動の影響について、当連結会計年度は、前期に比べ、回復基調にあるものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、その影響は継続しました。
下記売上高内訳の「マンション管理」「ビル管理」では、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の自粛や管理業務の休止等からの反動増となりました。「ホテル」「レジャー」では、前期に比べ、一定の回復をしており、「ウェルネスその他」におけるアセット売却収益の計上等により、セグメント全体では増収増益となりました。
なお、2022年3月末のマンション管理ストックは832千戸(うち総合管理戸数528千戸)となっております。
| (億円) | ||||||
| 前期 | 当期 | 比較 | 通期予想 (11月4日公表) | 対予想 | ||
| 売上高 | 3,512 | 3,838 | 325 | 3,900 | △62 | |
| 営業利益 | △88 | △1 | 87 | 0 | △1 |
| 売上高内訳 | (億円) | ||
| 前期 | 当期 | 比較 | |
| マンション管理 | 1,227 | 1,273 | 46 |
| ビル管理 | 710 | 786 | 77 |
| ホテル | 221 | 285 | 64 |
| レジャー | 143 | 160 | 18 |
| ヘルスケア | 233 | 238 | 4 |
| ウェルネスその他 | 227 | 390 | 164 |
| ハンズ | 632 | 567 | △65 |
| 環境緑化 | 121 | 138 | 18 |
※ホテル :ハーヴェストクラブ、東急ステイ、リゾートホテル等
※レジャー :ゴルフ場、スキー場等
※ヘルスケア:シニア住宅、フィットネス施設等
※ハンズ :2022年3月31日に株式会社東急ハンズの全発行済株式の譲渡に伴い、当社の連結範囲から除外
| 期末管理物件数 | ||||
| 2019年3月期末 | 2020年3月期末 | 2021年3月期末 | 2022年3月期末 | |
| マンション(戸) | 831,684 | 829,533 | 839,891 | 831,603 |
| ビル等(件) | 1,540 | 1,561 | 1,532 | 1,626 |
ニ.不動産流通事業
売上高は2,345億円(対前期+10.5%)、営業利益は261億円(同+38.3%)となりました。
東急リバブル㈱における売買仲介のリテール部門・ホールセール部門は、活況な不動産流通市場により取扱件数及び平均取扱価格の上昇、また不動産販売における大型物件の計上等により、大幅な増収増益となりました。
| (億円) | ||||||
| 前期 | 当期 | 比較 | 通期予想 (11月4日公表) | 対予想 | ||
| 売上高 | 2,123 | 2,345 | 222 | 2,320 | 25 | |
| 営業利益 | 189 | 261 | 72 | 238 | 23 |
| 売上高内訳 | (億円) | ||
| 前期 | 当期 | 比較 | |
| 売買仲介 | 556 | 690 | 134 |
| 不動産販売 | 670 | 706 | 36 |
| 販売受託等 | 73 | 71 | △2 |
| 賃貸住宅サービス | 824 | 878 | 54 |
| 売買仲介 | ||||
| 2019年3月期末 | 2020年3月期末 | 2021年3月期末 | 2022年3月期 | |
| 取扱件数(件) | 25,570 | 26,437 | 25,635 | 28,750 |
| 取扱高(億円) | 12,455 | 13,159 | 12,265 | 15,780 |
※リテール、ホールセールの合計値です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,539億円となり、前連結会計年度末と比較して356億円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払△353億円等により資金減少の一方、税金等調整前当期純利益559億円、減価償却費433億円等により、765億円の資金増加となりました。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の売却217億円、固定資産の売却202億円等の資金増加の一方、固定資産の取得△463億円、有価証券及び投資有価証券の取得△299億円等により、318億円の資金減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の調達760億円等により資金増加の一方、長期借入金の返済△1,428億円、社債の償還△201億円等により、813億円の資金減少となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産、受注及び販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における我が国経済は、変異株の出現により新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する一方、ワクチン接種や行動制限緩和など、社会・経済活動の正常化に向けた取り組みが進捗し、力強さを欠きながらも持ち直す動きが見られました。
不動産業においては、オフィスビル市場は、テレワークの普及等に伴い、平均空室率の上昇や賃料水準の下落が続く一方、コミュニケーションの場として、またウェルビーイングの充実などの観点から、よりグレードの高いオフィスを求める動きも見られました。不動産投資市場では、金融緩和による良好な資金調達環境が維持されたことから、投資家の物件取得意欲は引き続き旺盛で、厳しい競争が継続いたしました。また分譲住宅市場は、低金利政策が継続するなか、2020年度にコロナ禍による販売活動への制約から供給が減少した反動もあって新築物件の販売が堅調であったほか、中古マンションの売買取引も活況を呈しました。
一方、都市部の商業施設やホテル・リゾート関連市場では、行動制限の緩和により集客は徐々に回復しつつあるものの、長距離移動や人混みのリスクを避ける傾向は続いており、依然として厳しい状況となっております。
財政状態については、当期末の資産残高は2兆6,343億円で、固定資産の売却や株式会社東急ハンズの連結除外等により、対前期末180億円減少、当期末の負債残高についても有利子負債の減少等により、1兆9,910億円と、対前期末525億円減少しております。当期末の純資産残高については利益剰余金等が増加し、6,433億円と、対前期末346億円増加しております。財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・都市開発事業セグメント
都市事業では、「都市(賃貸オフィス)」では、2020年9月に開業した「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」の通期稼働、「都市(賃貸商業施設)」では、東急プラザを始めとする当社グループの主要な商業施設の新型コロナウイルス感染拡大影響からの一定の回復、アセット売却は活況な不動産売買市況により売却益が増加となっております。住宅事業では、賃貸住宅等のアセット売却の減少の一方で、「住宅分譲」では、分譲マンションの計上戸数の増加等により増収となり、セグメント全体では増収増益となりました。
オフィス市場は、テレワーク等の働き方の多様化により、オフィスビルの需要縮小等が懸念されておりましたが、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しており、当社グループ保有物件における2022年3月末時点での空室率(オフィスビル・商業施設)は1.3%と、引き続き低水準を維持しております。当社ポートフォリオにおいては、新型コロナウイルス感染拡大による空室率及び賃料の大きな悪化影響は見られませんが、オフィス市場の景気や経済に対する遅行性や、各テナント企業のアフターコロナのオフィス戦略には注視が必要です。またコロナ禍を受け従業員の働き方の多様化、企業の環境や健康経営への関心の高まりなど、社会から問われる課題は高度化している中、東急不動産㈱のオフィスでは、テナント企業に働く場所を提供するだけでなく、ハード・ソフトの両面で様々な付加価値サービスを提供するため、新しい働き方として「GREEN WORK STYLE」の提案を行っております。センターオフィスを中心にシェアオフィスなど様々なワークプレイスの提供や、再生可能エネルギーを活用した環境への取り組み、従業員の健康やライフスタイルを充実させる取り組みなど、当社グループのリソースを活用したワンストップでのご提案により、テナント企業の企業価値向上と従業員のウェルビーイングに貢献してまいります。
大型開発プロジェクトについては、2020年9月に開業した当社グループ最大規模のオフィスビルである「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」は開業時より満室で稼働しており、今後の竣工物件としては、2022年7月竣工予定の「九段会館テラス」、2023年11月竣工予定の「渋谷駅桜丘口地区再開発計画」等、「広域渋谷圏」の内外において、複数の開発案件が進行しております。
商業施設については、2021年3月期は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、商業施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じましたが、2022年3月期は、前期に比べ影響は限定的であり、東急プラザを始めとする当社グループの主要な施設は一定の回復をしております。また新型コロナウイルスを契機として、EC化の更なる進展に伴い、都心施設を中心に体験型消費・共感型消費に対応するテナントの誘致にも注力しております。
環境対応として、2022年には東急不動産㈱が単独で保有する全てのオフィスビル・商業施設における消費電力を、東急不動産の発電所等が供給する再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えることを決定したほか、2025年度に新築ビル(着工件数ベース)の約50%をZEB水準とすることを目標に掲げるなど、先駆的に取り組んでおります。
分譲マンション市場は、都心立地や利便性を重視する顧客志向、在宅勤務を契機とした住宅の質の改善、住宅ローン金利の低位安定等、購買環境が引き続き良好なこともあり、実需層を中心に、当社グループのマンション販売は堅調に推移しており、2023年3月期の期初時点での分譲マンションの通期売上予想に対する契約済割合は58%となっております。「BRANZ(ブランズ)」のブランドで首都圏や関西圏を中心に分譲マンション事業を行っており、2021年12月に環境重視の取り組みを積極的に推進するため、「環境先進マンション」としてリブランディングいたしました。2030年度までに、全ての新築分譲マンションでZEHを標準仕様とし、また全物件に太陽光パネルを標準搭載してまいります。今後も好立地や希少性のある物件を厳選するとともに、持続的でより快適な暮らし心地と環境貢献したモノづくりに取り組んでまいります。建築工事費については、慢性的な人工不足や原材料価格の上昇によるコスト上昇の懸念等があり、引き続き状況を注視いたします。
2023年3月期の当セグメントにおいては、新規物件の取得環境が過熱する状況の中での厳選投資及び、「九段会館テラス」や渋谷駅周辺では最大規模の開発となる「渋谷駅桜丘口地区再開発計画」など、開発中の大型プロジェクトの着実な推進が重点課題となっております。また、分譲マンションの市況は、堅調に推移しており、引き続き着実に販売を進める方針です。
・戦略投資事業セグメント
「インフラ・インダストリー」は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加、「海外」は、米国における物件の売却配当の増加等により、増収増益となりました。
当社グループが、近年事業規模を拡大させてきた再生可能エネルギー事業は、FIT制度によって売電価格が固定されており、景気変動等に対する影響が少なく、安定的に収益に寄与する事業です。「ReENE(リエネ)」のブランド名で太陽光発電所、風力発電所などの開発に注力しており、稼働案件も着実に増やしております。外部環境としては、政府が2030年度の電源構成において、再生可能エネルギーの割合を36~38%に増加させる方針に加え、2050年までに温室効果ガスの排出を0にする2050年カーボンニュートラルを掲げており、今後も市場が拡大していくと思われます。
再生可能エネルギー事業の拡大では、積極投資による発電源の拡大と電力の地産地消など再生可能エネルギーの活用を進めるほか、パートナー共創による事業領域の拡大を図っていきます。さらなる規模拡大に向け、2022年3月末時点での定格容量1.3GW(持分換算前・開発中PJ含む)から2025年度には原子力発電所2基分相当となる2.1GWへ拡大させていきます。
物流施設は、EC市場の成長により需要拡大が見込める環境であり、再生可能エネルギーの活用やCASBEE認証取得等の環境配慮型施設や東急スポーツオアシスによる健康サポートなど、当社グループならではの付加価値を創出し、他社との差別化を図りながら、回転型事業として今後も事業の拡大を進めてまいります。
海外事業においては、米国投資事業のさらなる成長、アジアにおける事業領域の拡大など、対象国を厳選した上で、外部資金の積極活用により関与資産を拡大し、管理やアセットマネジメントなどのグループノウハウを活用した事業機会を創出するとともに、循環型再投資モデルの深化・発展を推進してまいります。
・管理運営事業セグメント
㈱東急コミュニティーにおける管理事業では、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の自粛や管理業務の休止等からの反動増となりました。東急不動産㈱のウェルネス事業では、「ホテル」「レジャー」では、前期に比べ、一定の回復をしており、「ウェルネスその他」におけるアセット売却収益の増加等により、セグメント全体では増収増益となりました。
マンション管理やビル管理の管理事業における事業環境は、管理民営化の拡大や管理難易度が高い複合施設管理の増加、改修及びリフォーム需要の拡大等が追い風である一方、新規物件管理受注環境の悪化や、近年の働き方の多様化等による人材確保難等については、対応すべき課題として認識しております。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、今後のデジタル化の進化を含めた省人化技術の活用等については、注視及び対応が必要です。重点課題としては、管理業においては、収益性や将来性を考慮した上でのストック拡大戦略の実行、工事業においては当社グループのシナジーを最大限活用した営業強化を進める方針です。
ウェルネス事業においては、2021年3月期は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、運営施設の休業や営業時間の短縮等、事業活動に大幅な制約が生じました。2022年3月期は、前期に比べ、回復基調にあるものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、その影響は継続しましたが、今後は、ワクチン接種の進展等により国内需要の一定の回復が見込まれております。お客さまに安心してご利用いただけるよう感染症対策の徹底に努めながら、引き続き顧客体験価値向上を追求し、国内需要の取り込み強化と、スマート運営の実現など運営効率向上及びコスト構造改革に取り組んでまいります。
ハンズ事業は、2022年3月31日に㈱東急ハンズの全発行済株式の譲渡に伴い、当社の連結範囲から除外されております。ハンズは、1976年に当社グループの中核会社である東急不動産㈱の100%子会社として創業しました。DIYを中心とした提案型ライフスタイルショップとして小売事業を行ってまいりましたが、小売業界の競争が激化する中、ハンズのお客さまへの提供価値及び事業価値の最大化を図るためには、㈱カインズがベストオーナーであると判断し、譲渡することを決定いたしました。
・不動産流通事業セグメント
東急リバブル㈱における売買仲介のリテール部門・ホールセール部門は、活況な不動産流通市場により取扱件数及び平均取扱価格の上昇、また不動産販売における大型物件の計上等により、大幅な増収増益となりました。
仲介事業における事業環境は、リテール・ホールセールともに活況な不動産流通市場により、取扱件数及び平均取扱価格など、新型コロナウイルス発生前の水準を上回っております。今後も新築分譲マンション市場の縮小により中古住宅市場の拡大が見込まれる一方で、長期的にはITの進化等による事業構造の変化への注視が必要と認識しております。DX活用による営業活動の効率化や、リテール部門における取引件数の更なる積み上げ、ホールセール部門における事業領域の拡大を目的とした法人戦略の強化等を重点課題として考えております。
DX活用による営業活動の効率化として、「マンション価格査定AI」を導入いたしました。実際の査定データとデータサイエンスを活用し、誤差率を低水準に抑えたAIの開発に成功しました。東急リバブルでは年間30,000件超のマンション査定を首都圏エリアで受託しており、このAIを活用することで約15,000時間の削減効果を見込んでいます。削減された時間は、人の力でしか出来ない顧客接点の深化・拡大業務に充てることで、人的資源の最大化を図る方針です。そして将来的には、本システムの外部提供も検討してまいります。
また、当連結会計年度における、新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響は、以下のとおりです。主に第1四半期にBtoCの事業において、事業活動に影響が生じましたが、前連結会計年度に比べ、影響は限定的でした。
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大による主な影響
| セグメント | 事業への影響 | 業績への影響 |
| 都市開発事業 | 主要商業施設の臨時休業や営業時間の短縮 | 歩合賃料の減少 |
| 戦略投資事業 | マンションギャラリーの営業制限 (インドネシア) | 計上戸数の減少 (インドネシア) |
| 管理運営事業 | フィットネスクラブや各種ホテルの 臨時休業や営業時間の短縮 | 運営収益の減少 |
| 不動産流通事業 | - | - |
2023年3月期は、新型コロナウイルスの感染拡大の長期化や、国際情勢の緊迫化に伴う、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等、不透明な事業環境下ではあるものの、引き続き活況な不動産売買市況によるアセット売却益の増加や売買仲介の拡大、管理運営事業は、ワクチン接種の進展等による国内需要の一定の回復等を見込んでおります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の終息時期等により、実際の業績等は変動する可能性があります。
ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
「GROUP VISION 2030」で掲げた財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
「資産のコントロール」では、既存事業の効率性向上と事業ポートフォリオの最適化が課題です。既存事業の効率性向上の具体的な施策として、資産活用型事業においては、分譲事業、循環型再投資事業、高効率事業の拡大、大型開発プロジェクトの着実な稼働、外部資本活用やフィー収入の拡大、資産ポートフォリオ入替、低収益資産の売却などに取り組みます。人財活用型事業では、規模の成長と共に労働集約型からの脱却などにより効率性を向上します。
「負債・自己資本のコントロール」では、財務規律を維持しながら、市況悪化時にも耐えうる財務基盤を構築し、円滑な資金調達を目的とした格付維持向上を図ります。引き続き、期間利益の積上げによりD/Eレシオを改善してまいります。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの資産、有形固定資産及び無形固定資産の増加額の内訳は以下のとおりです。
| (単位:百万円) | ||||||
| 都市開発 | 戦略投資 | 管理運営 | 不動産流通 | 調整額 | 連結 財務諸表 計上額 | |
| セグメント資産 | 1,627,515 | 463,590 | 403,441 | 221,824 | △82,028 | 2,634,343 |
| 有形固定資産及び無形固定資産の増加額 | 12,509 | 22,039 | 9,924 | 4,166 | 178 | 48,818 |
当社グループの主要な資金需要は、都市開発事業セグメントにおけるオフィスビルや商業施設、マンション用地や賃貸住宅等の取得・開発資金、戦略投資事業セグメントにおける再生可能エネルギー発電施設、物流施設等の取得・開発資金、海外事業への出資、管理運営事業セグメントのウェルネス事業におけるリゾート施設等の取得・開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費の増加等により765億円の資金増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得や有価証券及び投資有価証券の取得等により318億円の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少等により813億円減少し、現金等の期末残高が1,539億円となりました。翌連結会計年度においても、オフィスビルや商業施設、再生可能エネルギー施設や物流施設等への投資が計画されておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの実績及び、翌連結会計年度における予想は以下のとおりです。
| (単位:億円) | ||
| 2022年3月期 | 2023年3月期 (予想) | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 765 | 411 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △318 | △1,201 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △813 | 790 |
(注)2023年3月期(予想)の棚卸資産への投資は、投資活動によるキャッシュ・フローに含みます。